まぼろしテンダー




「昴!危ないから、もうやめなって!」



かわいい制服にはまったく似合わないジャージのズボンをスカートの下に履いて、ブレザーの中にはピンクのパーカー。


自分でもちぐはぐだと思うけど、かわいいものは苦手でも、ピンクだけは嫌いじゃない。
というか、せめて色くらいはかわいくしておきたいなって思う気持ちが、私の中にもちゃんとある。


一応、女の子だから。



「す、ば、るー!私のプリントなんてどうでもいいって!」



2階の3組の教室から見える、学校の記念樹だって言われてるやたら大きな木によじ登って、なっちゃんの追試のプリントに手を伸ばす。


分かってる。立ち入り禁止のベランダで、なっちゃんの追試のプリントを勝手に見てた私たちが悪い。



「昴!落ちたらシャレにならないから!」



ベランダから身を乗り出して叫ぶなっちゃんの姿が、視界の端に入る。


でも、このプリントがないと、なっちゃんはまた先生に怒られるでしょ。

休み時間中にやることじゃないって分かってるけど、それでも、先生に見つかる前に取らなきゃいけない。今しかない。