あの夏、キミが描いた青空


琴音なら絶対に覚えてる。



そう思っていたが、実際は違った。



「大野?誰それ」



「えっ?」



嘘でしょ?あれだけ大野の周りに群がってたのに。



「紗英、変な夢でも見たんじゃないの?」



いや、あれは絶対に夢ではない…はずだ。



あたしは同じクラスの女子に順番に聞いていった。



しかし誰もがこう言う。



『大野って誰?』



あんなに騒いでいた女子たちは、みんな不思議そうな顔をしていた。



「何で…」



何でみんな、大野のこと覚えてないの?



あんなに王子様呼ばわりしていた琴音も、「琥珀くん」って寄っていた女子たちも、誰ひとりとして大野のことを覚えていなかったのだ。







何気なく授業が終わり、今日の学校が終わった。



晴れたことだし、琴音と一緒に遊びに行きたいな。



そんなことを考えながら帰りの準備をする。



「これも持って帰らなきゃな」



机の中に置き勉していた教科書を持ち帰ろうと、全て取り出した。



すると、一枚の紙切れが落ちた。



「何だこれ」



あたしは紙切れを拾った。



すると、そこには文字が書いてあった。



『紗恵、好きだ』



これは間違いなく、大野の字だ。



「私の漢字、間違ってるよ…」



だけどそんな彼も、たまらなく愛おしかった。



あれはやっぱり、夢ではなかったのだ。



確かに、大野は存在した。



あたしは紙切れをぎゅっと胸に抱きしめた後、大切にカバンの内ポケットに入れた。