あの夏、キミが描いた青空


すぐに部屋着から着替えたあたしは、スマホを片手に部屋を出た。



お母さんの目を掻い潜って家を飛び出し、何とか公園に着いた。



あたしが着いた頃、みんなは泣いたり、慰め合ったりしていた。



「どうしたの?」



琴音を見つけたあたしは駆け寄って、状況を聞いた。



「紗英、実は…」



琴音の話によると、大野と女子たちはあたしが知らないところで実は連絡先を交換していたという。



そして大野から話があると言われて集められたあたし以外の女子たちは、ワクワクしながら指定されたこの公園に来た。



そこで大野から、『天気を操る力がある』ことと『雨が降ってないところでは生きられない』ということを聞いたらしい。



「それで私たちは天気を操れるなら一生雨にすればいいじゃんって言ったんだけど…」



どうやら大野は雨で落ち込むあたしを見て、天気を雨から晴れにしようと言い出したみたいだ。



「琥珀くん、今からあんたの為に青空描きに行くってよ」



柏木さんが悲しそうに言った。



「えっ、そんな…」



これじゃあ大野が消えてしまう。



「うちらは手を引くよ」



「高木さん、琥珀くんは高木さんを待ってるはず。だからあなたが行ってあげて」



あたしは正直戸惑った。



大野はあたしの為に青空を描いてくれる。



大野には消えてほしくない。



けれど、本当に行っていいのかわからなかった。



あたしには判断ができず、みんなの顔を見る。



するとみんなは、あたしに「行ってらっしゃい」と言いたげな顔をしていた。



「お願い、高木さん。琥珀くんの元に行ってあげて」



飯田さんがあたしの手を握って言った。



「琥珀くんを追いかけて!」



「今ならまだ間に合う!」



そんな声が聞こえた。



「みんな…」



みんなは頷いている。



あたしが行くしかない。



あたししか行けない。



みんなに背中を押されて、傘をその場に投げ捨て、意を決して走り出した。



後ろからは、



「頑張れ!」



「間に合うよ!」



そんな声が聞こえた。



土砂降りの雨の中を、傘も持たずに走る。



はやく…早く彼に会いたい。



彼が消える前に、どうしても会いたい。



会って、「好き」って伝えたい。



明日には、彼が描いた青空が待っているから。