「えっ、何で?私の何がダメだったの?」
琴音はバッと顔を上げて、大野を見つめる。
琴音ってこんな積極的な性格だったんだ。
振られた原因を聞くなんて、勇気があるなぁ。
琴音には悪いけどあたしも琴音を振った原因が気になって、耳をすます。
大野は何て言うのかな。
あたしはドキドキしながら大野の返事を待った。
しかし、大野の返事は意外なものだった。
「俺、好きな人いるから」
本当にビックリだった。
あの大野でも、女子に興味がなさそうな大野でも、好きな人がいるんだ。
そりゃあそうだよ、大野だって人間だもんね。
ビックリしたのと同時に、何だかあたしの心が苦しくなってきた。
何でだろう。
あたしって、恋してるのかな?
大野のことが好きなのかな?
そう自分に問いかけてみるあたし。
そんなあたしを他所に、大野に好きな人がいると聞いても折れない琴音。
「えっ、誰?」
琴音はショックを受けたように、大野に好きな人を聞いている。
「教えねぇよ」
そうだよね。
好きな人なんて、知られたくないのは当然だよ。
ましてや自分が振った相手なんて尚更だよね。
大野に「教えない」と言われても、しつこく聞き続ける琴音。
大野は困っている。
なんとかしてあげたいけど、あたしにはどうすることもできない。
しばらくして、琴音が「あっ」と声を上げた。
「琥珀くんの好きな人ってさ、もしかして紗英?」
琴音の言葉に、一瞬頭が真っ白になった。
「は?」
と大野が言って、
「え?」
とあたしがつぶやく。
「ねぇ、やっぱりそうなんでしょ?」
そう言って大野に詰め寄る琴音。
大野は一歩ずつ後ろに下がっていく。
「答えてよ」
大野は動揺している。
そんな状況を、隠れてコソコソ見ているあたし。
「いや、えっと…」
大野の曖昧な返事に対して、琴音はさらに言葉を続ける。
「言っとくけど、紗英はやめたほうがいいよ?だってアイツ、色んな男振り回してるもん」
「嘘…」
何よりも衝撃的だった。
友達にそんな嘘を付かれるなんて、とてもショックだった。
もちろん振り回してなんかない。
琴音はあたしのこと、そんな目で見てたの?
ショックで俯くあたし。
だけど、大野は違った。
「アイツは…紗英はそんなことする奴じゃない」
急に下の名前を呼ばれてビクンと心臓が跳ね上がった。
今まで女子の名前を呼ばなかった大野が、急にあたしの名前を呼んだのを聞いて、琴音は俯いた。
かと思えば、すぐに顔を上げた。
「本当だよ。紗英は、裏がある人間だから」
それを聞いた大野は相当腹が立ったのか、あの時みたいに怒鳴った。
「って言ったらお前だって裏があるじゃねぇか!アイツの前では仲のいい友達を演じて俺の前ではデマ流して。俺、そういう奴が一番嫌いだから!」
そう言われた琴音はとうとう折れて、走り去った。

