重たい瞼を開ける。
どうやらあたしは、いつの間にか寝てしまったみたいだ。
「体調はどう?」
隣には保健の先生がいた。
起き上がると、頭痛は治っていた。
さっきよりも全然よくなった気がする。
「よくなりました」
それを聞いた先生は、小さく拍手し始めた。
「よかったー!念の為熱測ろうね」
先生から体温計を受け取って熱を測ると、
「36.9!」
さっきまでの熱が嘘のように下がっていた。
「紗英ちゃんすごい!もう熱下がったね!」
先生は安心した表情を浮かべた。
「帰れそうでよかった。彼氏くん、心配してたから」
ああ、大野は結局『彼氏』という風に通したんだね。
「じゃあ、さようなら」
「気をつけて帰ってね」
大野は先に帰ったとのことだったので、あたしはひとりで帰る。
熱は下がったし、足取りが非常に軽かった。
ペースを緩めず生徒玄関に向かう。
生徒玄関に近づいてきた頃、誰かの声が聞こえた。
この声は、琴音?
あたしは慌てて足を止めた。
こっそり様子を伺うと、あるものを見てしまった。
あれは、大野と琴音だ。
あたしは前屈みになりながら来た道を引き返して、生徒玄関の角に身を潜めた。
そこから顔だけ出して、再び様子を伺う。
耳をすますと、琴音の声がはっきり聞こえ始めた。
「琥珀くん、あのね、私…」
琴音は中々言いたいことが言えなさそうだ。
この感じだと、きっと告白。
とんでもない現場に出会ってしまった。
「うん、何?早く帰りたいんだけど」
中々言い出せない琴音に、急かすように大野が言う。
大野に急かされ、意を決したように、琴音が顔を上げた。
「あの…私、琥珀くんのことが好きです…!だから、その…」
やっぱり告白だった。
いずれこうなることはわかっていた。
大野はきっとオッケー出すんだろうな。
琴音と付き合うんだろうな。
と勝手に予想していた。
あたしは拍手をする準備をした。
だが、
「ごめん。無理」
大野が出した答えは、あたしが思ってたのとは違うものだった。
あたしは、拍手をしようとしていた手をすぐに引っ込めた。
琴音、よく頑張ったよ。
あたしは大野に振られて、悲しそうに俯く琴音を遠くから見ていた。
大野が帰ったら慰めてあげよう。
結果も聞いたことだし、そろそろ大野、少しして琴音も帰るだろう。
そう思って角から出ようとしとき、琴音は言葉を続けた。
あたしは足を引っ込めて、再び角に身を潜めた。

