みんなが席に着いた頃、平松先生が話し始めた。
「今日は来週のキャンプについてだ」
キャンプが来週に迫ってるというのに、なぜうちの担任はギリギリなのだろうか。
「そういえばそうだったな」と、キャンプに行くことすら忘れている人もいた。
「まず、バスの席についてだが…」
『バスの席』と言う言葉を聞いて、女子が盛り上がる。
「はーい!私、琥珀くんの隣がいいでーす!」
「いやいや、私が琥珀くんの隣!」
「私だよ!」
大野の隣を争う女子たちに、先生が呆れてため息を吐いた。
「悪いけど、バスの座席は今の席の隣同士って決まったんだ」
それを聞いた女子たちは肩を落とした。
「えー」と不満の声を漏らす女子たち。
大野はニヤリと笑ってその様子を見ていた。
「次は班決めをする。これは平等にくじ引きな」
先生は箱の中に、1から8までの数字を書いた紙を入れた。
うちのクラスは32人だから、ちょうど4で割れる。
4人班だ。
箱に入った紙を順番に引いていく。
女子たちは「琥珀くんと同じ班になれますように」と言いながら紙を引いていった。
私は6班だった。
そして、隣で引いた紙をじっと見つめる大野を見ると、「6班(リーダー)」と書かれた紙を持っていた。
あたしは大野と同じ班だ。
しかも、リーダーもこれで決まるんだな…。
大野がリーダーなのは少し心配だが、かと言ってあたしがリーダーになるのも嫌だ。
「じゃあ班ごとに集まって、当日の計画を立ててくれ。個人の計画を立てるのは今日の課題な」
どうやらキャンプ場での行動は班で決めるらしい。
最初は友達同士で行動し、次に班で行動するそうだ。
先生の指示で「1班ー!」「7班集合!」などと呼びかけをし、集まる生徒たち。
あたしたち6班は、大野の席に集まった。
「やったぁ!琥珀くんと一緒っ!」
そう言って上目遣いで大野の腕に絡みついたのは、あたしが一番苦手意識を持っている桃田さんだ。
桃田さんは、裏では人をいじめ、大野の前ではいい子ぶる。
まさにあたしが苦手なタイプNo. 1。
もうひとりは、真面目系男子の井原くん。
井原くんは呆れ、ため息を吐きながら桃田さんを見ていた。
「離れろ」
大野が桃田さんの手を振り払って席を立った。
「大野くぅん、どこ行くのぉ?」
大野の後をちょこちょこ着いていく桃田さん。
口調がキモくて思わず笑いそうになるのを、必死に堪える。
立った大野は近くの机の周りを一周し、あたしと井原くんの間に来た。
もちろん桃田さんが入れるスペースはない。
「ちょっと、退いてよね」
大野の隣に立つあたしを、さっきまでの口調ではなく普通の話し方で、桃田さんが押し退けようとする。
そんな桃田さんを見て、大野がこう言った。
「無理だから。俺はコイツの隣から離れない」
頭の中が混乱する。
ここ最近、大野はやっぱりおかしい。
前の大野はこんなんじゃなかったのに。
桃田さんは一瞬フリーズした後、走って教室を出て行った。
教室を飛び出した桃田さんを見えなくなるまで目で追いながら、井原くんは再びため息を吐く。
だが、誰も桃田さんを追いかけなかった。
こんなんでうちの班は大丈夫だろうか。

