次の日の朝、外は水たまりどころではないくらいに雨が溜まっている。
「これもう家の中入ってくるでしょ…」
あたしはそれが心配だった。
こんなにも雨が溜まっているのだから、もうそろそろ家の中に入ってきてもおかしくないのだ。
そして今日も頭が痛いけど、きっともう柏木さんたちにいじめられることはない。
そう思うと、少しだけ気が楽になった。
*
学校に着いて、自分の教室に向かう。
そして、最後の角を曲がろうとした時、後ろから誰かに腕を掴まれた。
「ひっ」
変な声が出てしまい、慌てて口元を覆う。
後ろにいるのは一体誰だろうか。
あたしは恐る恐る後ろを振り向いた。
すると、そこにいたのは…
「大野!?」
あたしの腕を掴んだのは、大野だった。
大野は黒いパーカーを着ていて、フードを被っていた。
まさに変質者。
「こんなところで何してるのよ」
今の大野の格好は、この学校の服装に適していない。
先生に見つかったら即没収だろう。
しかも、こんな夏にパーカーなんて…。
おかしすぎて笑いそうになる。
すると、じっとあたしを見つめていた大野が口を開いた。
「なぁ、今日さ、学校サボらねぇ?」
「は?」
何を言ってるんだか。
学校をサボるって…そんなことやって良いわけないでしょ。
あたしは断ろうとして口を開けたが、すぐに閉じた。
日々の学校生活に疲れが溜まっている。
よくよく考えたら、ずっと雨続きで、最近はあまり遊びにも行っていない。
今日くらい、いいのかな?
「そうだね。サボろうか」
私の返事を聞いた大野は、嬉しそうに微笑んだ。
何気に大野の笑う顔、初めて見たかも。
「そうと決まれば見つからないうちにここから出るぞ」
まだ朝早く、あまり人が登校してくる時間ではないため、あたしはすんなり生徒玄関に靴と傘を取りに行くことができた。
大野は職員玄関の、浅田先生の靴箱に靴を隠したみたいだ。
浅田先生はいつも昼から来る人だから、隠しものをしていてもバレる心配はない。
それをいいことに、みんな浅田先生の靴箱に隠すものだから、いつの間にか『早い者勝ち』と言われるようになった。
あたしは靴を履いて、大野と一緒に職員玄関から出た。
「雨だね」
あたしは空を見上げてつぶやいた。
「雨、嫌いか?」
「うん。嫌い」
大野の質問に、あたしは即答した。
「雨ってさ、気分下がるじゃん?傘持つのもめんどくさいし」
人が多いところだと傘がぶつかるし、尚更ね。
「やっぱり雨が好きな奴なんていないよな」
そう言って大野は俯いた。
*
結局大野とはあたしの家の前で別れた。
悲しそうに俯く彼と、これ以上一緒にいてはいけない気がしたからだ。
学校に行って何もせず、大野に家まで送ってもらっただけ。
意味のわからない行動だったが、まあいいとしよう。
お母さんも朝早くから仕事に行ったし、家にひとりは快適だ。
もう一度学校に行くのも面倒だし、今日は休もうかな。
あたしはベッドに横になると、すぐに眠気が襲ってきて、すぐに寝てしまった。

