あの夏、キミが描いた青空


「送ってくよ」



少しの沈黙の後、大野が言った。



今までの大野は、こんなことを言う人ではなかったのに。



大野に何があったのだろうか。



「大丈夫」



本当は嬉しいはずなのに、大野の前では素直になれないあたし。



本当に可愛くないなと痛感する。



「…そうか」



そう言って大野は俯いた。



今日の大野はやっぱり何か違う。



見たことがない大野の姿に、ただただあたしは驚いていた。



そして、再び沈黙。



沈黙は嫌いだ。



何より気まずいから。



でも、これじゃあ話しかけずらいよ。



あたしは大野の横を歩くのをやめ、ペースを落として少し後ろを歩く。



結局あの後は、生徒玄関までひとことも話さなかった。



特に話題はないけど、何か話したかった気もする。



「本当に大丈夫か?」



先に口を開いたのは大野だった。



「大丈夫だって」



本当はもう少し一緒にいたいけど…。



やっぱりあたしは素直じゃない。



「またね」



明日も、その次も、またその次も、いつでも大野は存在する。



また会える。



卒業までは、顔を合わせることができる。



だから、今日一緒にいられなくったって、明日また会えばいい。



そう自分に言い聞かせて、家に帰った。