あの夏、キミが描いた青空


「怪我はないか?」



大野はあたしの顔を覗き込んで言った。



顔が近くてドキドキする。



だけどあたしは、ドキドキする気持ちを抑えて、



「大丈夫」



と、いつものテンションで言った。



「ならよかった。気づくのが遅くなって悪い」



「大野は悪くないよ」



ものすごく新鮮な気持ち。



何だか、大野が大野じゃないみたいだ。



「アイツらとはずっと前からあんな感じだったんだってな」



その言葉に、あたしは足を止めた。



「何で知ってるの?」



大野は絶対に気付いてないと思ってたのに。



「名前は知らねぇけど、クラスの地味メガネ男に聞いた」



地味メガネ男と聞いて思い浮かぶのは、ヲタクの安田くんだった。



しかも地味メガネ男って…もっと別の言い方あったでしょ。



その言葉は心の中に仕舞っておいた。



「ねぇ、何で大野はあたしを助けてくれたの?」



あたし、前にあんな酷いことを言ったのに。



もしかしたら、あまり大野には刺さっていなかったのかもしれない。



「別に。大した理由はねぇよ」



相変わらず冷たい話し方だけど、何より助けてくれたことが嬉しかった。



「ありがとう」



そう言ってあたしは、初めて大野の前で微笑んだのだった。