それは、放課後の出来事だった。
「ちょっと来い」
今日も大野がいないタイミングを見計らって、柏木さんグループが来た。
「えっ、なんですか?」
柏木さんはあたしの問いに返事をすることもなく、力強くあたしの腕を掴むと、そのまま飯田さん、石塚さんと共に体育館に足を運んだ。
不幸なことに、体育館のドアは鍵がかかっていなかった。
体育館に入って、舞台に連れて行かれた。
これから起きることは、決していいことではない。
嫌な予感しかしなかった。
「直子、アレ持ってきて」
「了解」
柏木さんに『直子』と呼ばれた飯田さんは、舞台裏に走って行った。
それより、アレとは一体何なのだろうか。
危ない物じゃないといいけど…。
「はい。持ってきたよ」
『危ない物じゃないといいけど…。』そんな思いはあっさりと消えた。
飯田さんが持ってきた物に、あたしは絶望した。
なんと飯田さんは、アイロンを持ってきたのだ。
「ありがとう」
柏木さんは飯田さんにお礼を言うと、あたしの腕を舞台の上に置いて、押さえつけた。
次に起こることは、すぐにわかった。
もしかして、このアイロンであたしの腕を焼こうとしてるの?
それは絶対に嫌だ。
こんなので焼かれたら、たまったもんじゃない。
「やめて…やめてよっ!」
あたしは必死に抵抗した。
しかし、柏木さんはあたしの腕を抑える手を一切緩めなかった。
「大人しくしろ!お前が琥珀くんに近づいたのが悪いんだよ!」
そう大声で叫ぶ柏木さん。
「準備オッケーだよ」
飯田さんはコンセントを繋いで、アイロンを温めていた。
三人組のもうひとり、石塚さんはスマホを構えて楽しそうに動画を撮っているようだ。
「直子、アイロン持ってきて」
「はーい」
柏木さんの指示で、飯田さんがアイロンを持ってきた。
あたしの腕の上で、アイロンを持って構える飯田さん。
「思いっきり焼いちゃって!」
柏木さんがそう言って、笑う三人組。
腕にアイロンが当たるまで、後数センチ。
もう無理だ、やられる。
あたしは覚悟を決めて目を閉じた。
と、その時、思いっきり体育館のドアが開いた。
「何をしているんだ!」
この声は…。
「大野!」
あたしは涙声で、大きな声で叫んだ。
「えっ?」とみんなが振り向く。
「やめろ!アイロンを置け!」
大野が走りながら叫ぶ。
「琥珀くん!」
突然現れた大野に、女子たちは大興奮だ。
だけど、すぐにその表情が一転する。

