あの夏、キミが描いた青空


家に着く頃には、靴や靴下はもちろん、スカートがびちょ濡れで寒くなってきた。



「ハックシュン!」



さっきからくしゃみが止まらない。



念の為熱を測ったが、平熱だった。



ひとまず熱はなさそうでよかったと思いながら、お母さんにバレないようにコソコソ隠していたお菓子を一袋取り出して食べた。



その後は今日の課題をした。



いつの間にかお母さんは帰って来ていて、夜ごはんを作っているところだった。



リビングで付いていたテレビは、すぐに消した。



「紗英、何かいいことでもあった?」



夜ごはんを食べていると、お母さんが聞いてきた。



「え?別に…。何で?」



「顔がニヤけてるから」



嘘!?何で!?もしかして、大野?



いや、別に大野なんて、ね?



「あーっ、もしかして大野くん?」



一瞬にしてバレてしまった。



何でわかったんだろう。



でもやっぱり素直になれないあたしは、



「ち、違うよ!そんなんじゃないから!」



そう言って自分の部屋に駆け込んだ。







次の日、今日もやっぱり雨だ。



湿気で頭が痛いし最悪だ。



外を見ると、あちこちに水たまりができている。



あたしは靴に防水スプレーをかけ直して、いつもより少し遅い時間に家を出た。



教室に入ると、やっぱり大野の周りには女子が群がっている。



「琥珀くん、昨日はどうしたの?」



「大丈夫だった?」



そんな女子たちの心配の声さえ無視する大野。



これだけ無視されて続けても寄っていく女子たち。



もう尊敬レベルだよ。



あたしは女子たちのせいで席に座れないため、琴音の席に行った。



前までは寝坊ばかりしていた琴音だったが、最近は間に合っている。



今日はあたしより早かったのだから。



「琴音。おはよう」



あたしは、机に伏せている琴音に挨拶をした。



すると琴音はバッと顔を上げて、



「あー!紗英ー!」



と、ぐずぐず言って席を立ち、あたしにしがみついてきた。



琴音の体重があたしにのしかかる。



「ちょっと琴音、どうしたのよ」



あたしは琴音を支える。



「ねぇ聞いてよ、あたしだって王子様のとこに行きたいのにさー」



そう言って大野を指差す琴音。



「じゃあ行けばいいじゃん」



ただそれだけの話なのに。



けれど次に琴音から聞いた話は、とても残酷な話だった。



「いやーそれがさ、追い出されちゃったんだよねー。何なら弁当の中身捨てられたし」



追い出すのも酷いけど、弁当の中身を捨てる方がもっと酷い。



「お母さんが朝早くから作ってくれたのにぃ…」



琴音は目に薄ら涙を浮かべている。



あたしが何とかしないと。



そう思って大野の周りに群がる女子たちの方に歩き出したとき、急に目眩がして意識を失い、その場に倒れてしまった。