あの夏、キミが描いた青空


教室に入ると、女子三人組がいた。



あたしの苦手な柏木さんグループだ。



「ああっ!琥珀くん!おはよう!」



大野に気がついた途端、目を輝かせる女子たち。



そんな女子たちに、大野は見向きもしなかった。



「ねぇねぇ琥珀くん、今日の放課後デートしない?」



「いやいや、私とデートだよねっ!」



「私とふたりでプリクラ撮りに行こうよ!」



朝っぱらから女子に囲まれて大変そうだ。



そんな大野たちを横目に、あたしは自分の席に座ろうとしたときだった。



ドンっと押されて、あたしは尻もちをついた。



三人組のひとり、飯田さんがあたしの椅子を奪い取ったのだ。



「あははははっ、ドブネズミちゃんに琥珀くんのお隣は不釣り合いだわ」



そう言って三人組は笑っている。



あたしはどうしようもなくて、俯いてしまった。



と、そのとき、大野が席を立った。



「琥珀くん!どこ行くのー?」



その後ろをちょこちょこと着いていく女子たち。



すると大野はあたしの前に屈んで、手を差し出した。



「ほら」



その光景を見た女子たちは、何やらコソコソ話をしている。



「琥珀くん、綺麗な手が汚れちゃうよ…」



「そうだよ、コイツのことなんかほっといてさっ!」



いじめられるって、こういうことなんだ。



「あんたもあんたで琥珀くんに手を貸してもらってるんじゃないわよ!」



「そうよ、自分で立ちなさいよね!」



いじめられるって、こんなにも苦しいものなんだ。



「ほら、手。掴めよ」



そう言って、さらに手を伸ばしてくる大野。



だけど…



「いい」



あたしは大野の手を払ってカバンを持ち、教室を飛び出した。



「お、おい!」



そんな大野の声と、



「ふふっ」



女子たちの笑い声を無視して、行くあてもなく走ったのだった。