ミラー☆みらくる!

 洗面所で鏡と睨めっこをする。
 昨日、もうこれ以上身体から水分がでないというくらい泣いた目は、当然だけどそれとわかる状態。
 なのにお母さんは、起きてきたあたしの顔を見ても何も言わなかった。
 いつもみたいに軽口たたいて、普段通り接してくれた。

 気づかないわけない、とは思うんだけど。
 朝ごはん、「美味しい」って伝えたら、嬉しそうに笑ってくれた。
 あぁ、こんな一言でも、伝えるって大事なんだね。

 それに気づかせてくれたリナ。
 鏡に向かって呼びかけても、リナの返事はもう、聞こえない。

 うん……わかってる。
 パンッ! と頬に気合を入れて出かける準備を整えた。

「あら莉菜、重そうな鞄もってどこに行くの?」
 リビングでお母さんが不思議そうに声をかけてくる。
「うん、友達と図書館」
 その答えを聞いたお母さんが、信じられないものを見たようにオーバーなリアクションをする。

「莉菜が、莉菜が図書館……熱、熱はないかしら?」
「またそのくだり? ちゃんと話したでしょ。今回のテストはペアを組んだ子に迷惑かけちゃうから、絶対に赤点取るわけにはいかないの」
「ふふっ。本気で頑張ってるのね。土曜日に図書館なんて、そんな日がくるなんてね」
 揶揄いながらも、どこか嬉しそうなお母さんは鼻歌交じりだ。

「帰りはそんなに遅くならないと思うから」
「はい。頑張ってらっしゃい。あ……念のため、傘、持っていく?」
「天気予報は降水確率ゼロ。この綺麗な青空を見ても、それ言うわけ?」
「冗談よ。気をつけていってらっしゃい。お友達と仲良くね」
 玄関で手を振るお母さんに、振り返して外に出た。

 昨日、学校では鳴海の目の前でリナは突然姿を消したらしい。
 連絡先なんてお互い交換していなかったのに、芹香ちゃん経由で連絡先を手に入れた鳴海からの安否確認があった。
 しかもメッセージじゃなくて通話かけてきたし、声からして相当慌ててた。

 だけど昨日のあたしは説明できるほど冷静じゃなかったし、向こうもあたしの様子がおかしいのは気づいたみたい。
 それでとりあえず一日待ってもらって、今日会う約束をしたんだ。

 お母さんには図書館って言ったけど、ハンバーガーショップで。
 だって、図書館は静かすぎて話ができないもん。
 まさか、休日に鳴海と会う日がくるなんて思わなかったんだけどね。