【鏡の部屋】は現実をそのまま映しているはずなのに、鏡一枚隔てていたからか、わたしにとってはあくまで映像の一部だった。
それでも楽しかったのに、本当の世界を知ってしまえば【鏡の部屋】のことは曇りガラスのように思えてしまう。
太陽の日差しも、木々の緑も、お母さんの料理の匂いも、何もかも【鏡の部屋】ではわからなかったことだから。
「あた、あたしもっ、リナに会えてよかった。リナがあたしとして生活しているのを見て、楽しかったし、いっぱい色んなこと知ったよ。もっと素直にならなくちゃって思った」
「あ、そこ気づいてくれた?」
照れくさそうに莉菜が俯きながらも言葉を続ける。
「だって、お母さんも嬉しそうだった。あんな風に笑いかけてくれていたこと、ここにいなかった気づけなかった。それにリナが素直だったから、芹香ちゃんや鳴海も違う一面を見せてくれたんだ。あたし、芹香ちゃんにいつも甘えてばかりだったし、鳴海はただムカつくやつって思ってたけど、リナのおかげで違うって気づけた」
「気づけるのは、莉菜自身の心がきれいだからだよ」
鳴海は莉菜に比べてわたしの方が素直だって言ってたけど、やっぱり莉菜自身が本質として素直なんだよね。
わたしのベースは莉菜なんだから。
「テスト勉強、頑張ってね」
「……リナが頑張ってたの、見てたもん。あたしだって、頑張らないとね」
「うん。莉菜ならきっと大丈夫」
あぁ、もう、限界かな。
もう自分が莉菜の姿を保っていないのがわかる。手を広げているつもりでいるのに、見えるのは光に溶けるような粒子が揺らめいている。
「莉菜、ずっと傍にいる」
だから、泣かないで。
これはお別れじゃないよ。姿が見えなくなったって、わたしはきっと莉菜の中にいるから。
これからも見守っているよ。
楽しそうにしている姿も、怒っている姿も。
ひょっとしたらこれから変わっていくかもしれない、新しい感情をみせてくれる時にも。
ずっと、ずっと、傍にいるからね。
「リナッ‼」
叫ぶような声を耳にして、少しでも安心させたくて、わたしは微笑んだつもりだけれど、きっとその姿はもう莉菜には見えていなかったと思う。
――ありがとう。そして、さようなら。
それでも楽しかったのに、本当の世界を知ってしまえば【鏡の部屋】のことは曇りガラスのように思えてしまう。
太陽の日差しも、木々の緑も、お母さんの料理の匂いも、何もかも【鏡の部屋】ではわからなかったことだから。
「あた、あたしもっ、リナに会えてよかった。リナがあたしとして生活しているのを見て、楽しかったし、いっぱい色んなこと知ったよ。もっと素直にならなくちゃって思った」
「あ、そこ気づいてくれた?」
照れくさそうに莉菜が俯きながらも言葉を続ける。
「だって、お母さんも嬉しそうだった。あんな風に笑いかけてくれていたこと、ここにいなかった気づけなかった。それにリナが素直だったから、芹香ちゃんや鳴海も違う一面を見せてくれたんだ。あたし、芹香ちゃんにいつも甘えてばかりだったし、鳴海はただムカつくやつって思ってたけど、リナのおかげで違うって気づけた」
「気づけるのは、莉菜自身の心がきれいだからだよ」
鳴海は莉菜に比べてわたしの方が素直だって言ってたけど、やっぱり莉菜自身が本質として素直なんだよね。
わたしのベースは莉菜なんだから。
「テスト勉強、頑張ってね」
「……リナが頑張ってたの、見てたもん。あたしだって、頑張らないとね」
「うん。莉菜ならきっと大丈夫」
あぁ、もう、限界かな。
もう自分が莉菜の姿を保っていないのがわかる。手を広げているつもりでいるのに、見えるのは光に溶けるような粒子が揺らめいている。
「莉菜、ずっと傍にいる」
だから、泣かないで。
これはお別れじゃないよ。姿が見えなくなったって、わたしはきっと莉菜の中にいるから。
これからも見守っているよ。
楽しそうにしている姿も、怒っている姿も。
ひょっとしたらこれから変わっていくかもしれない、新しい感情をみせてくれる時にも。
ずっと、ずっと、傍にいるからね。
「リナッ‼」
叫ぶような声を耳にして、少しでも安心させたくて、わたしは微笑んだつもりだけれど、きっとその姿はもう莉菜には見えていなかったと思う。
――ありがとう。そして、さようなら。

