そう。今のわたし、もうすぐ消えそうだ。
【鏡の部屋】に戻るんじゃない。わたしという存在のおわりがきたんだ。
悟ったわたしの感情が伝わったのか、目の前で莉菜が信じたくないと言わんばかりに、首を大きく横に振り続ける。
そんな莉菜の頭を撫でようと手を伸ばしても、やはり触れることが出来ない。
わたしに莉菜の気持ちが伝わってくるように、莉菜にもきっとわたしの気持ちは伝わっている。
決して綺麗なだけじゃない、消えたくないって気持ちも。
だけど、どこかで納得しちゃっているんだ。
だってさっき、わたし自身が鳴海に言ったんだもの。
『分身』だって。
わたしは莉菜の一部。きっと共存することは出来ないんだ。
不思議な入れ替わりの現象ってなんで起きたのかな。
神様からのプレゼントだったのかな?
ずっと【鏡の部屋】にいたわたしに、外の世界を体験させてくれたんだ。
いっぱい、色んなことを知った。
お母さんがすっとぼけながらも、莉菜を大事にしていること。ご飯が美味しいってこと。
芹香ちゃんは鏡の中で見ていた通りにしっかりしていて、知らなかったのは恋している姿がかわいいってこと。
鳴海はムカつくって思っていたのに、本当は面倒見がよくて、わたしと莉菜の違いに気づくくらいよく見てくれていたってこと。
どれも全部、大切な宝物になった。
もしかしたら、それがおわりの原因なのかもしれない。
莉菜とわたしで、心が二つになってしまったから。
今までは莉菜の感情が主体で、わたしはあくまで傍観者だった。
見ているだけだったから、なにも感じることはなかった。
莉菜の感情をなぞるように莉菜が楽しければ楽しいし、莉菜がムカつけばムカついた。
でも今は違う。
勉強は大変だけど、一つずつ理解していくのが楽しいし、莉菜は鳴海がムカついていたのに、わたしは今はイイやつだって思っている。
きっと他にも莉菜との違いは発生しているんだ。
……入れ替わっていなかったら。
こうして消えることもなかったのかな。
あのまま【鏡の部屋】から莉菜を見続ける日が、続いていたのかな。
そうだとしても現実の楽しさを知ってしまったことが消えることに繋がったんだとしても、その前に戻りたいとは思わない。
だって、本当に楽しかったから。
「なんで? なんで、こんな突然っっ」
「そうだね。だけど、もともと今日いっぱいで入れ替わりは終わる予定だったんだもの」
「でもっ! それは入れ替わりの話でしょう!? あたしは、入れ替わった後もまた、リナと話せると思ってたっっ!」
うん、わたしも思っていたよ。
だけど不思議と、今は現実を素直に受け止められている。
「莉菜。話せなくても、わたしは莉菜のそばにいるよ。わたしはただ消えるんじゃない。【鏡の部屋】に戻るんでもない。わたしは、わたしは莉菜に帰るんだよ」
「……あたしに?」
「うん、きっとね。だってほら、わたしたちの心、今、繋がっているもの」
時間が経つにつれ、どんどんと気持ちのシンクロは強まっている。
莉菜が心からわたしに消えて欲しくないって思いも、混乱してどうしたらいいのかわからないって思っていることも、痛いほどに伝わってくる。
莉菜とは逆に、この現実を受け入れているわたしの気持ちも、きっと莉菜に伝わっているのだろう。
その気持ちのズレが、ますます莉菜を混乱させているのかもしれない。
そして気持ちのシンクロが進むにつれて、身体の透明化も進んでいる。
もう、あとどれくらいわたしは、この状態を維持できるんだろうか。
完全に消えてしまう前に、ちゃんと莉菜に伝えたい。
「莉菜。短い間だったけど、莉菜として過ごせて楽しかった。現実の世界って、こんなに鮮やかなんだね」
【鏡の部屋】に戻るんじゃない。わたしという存在のおわりがきたんだ。
悟ったわたしの感情が伝わったのか、目の前で莉菜が信じたくないと言わんばかりに、首を大きく横に振り続ける。
そんな莉菜の頭を撫でようと手を伸ばしても、やはり触れることが出来ない。
わたしに莉菜の気持ちが伝わってくるように、莉菜にもきっとわたしの気持ちは伝わっている。
決して綺麗なだけじゃない、消えたくないって気持ちも。
だけど、どこかで納得しちゃっているんだ。
だってさっき、わたし自身が鳴海に言ったんだもの。
『分身』だって。
わたしは莉菜の一部。きっと共存することは出来ないんだ。
不思議な入れ替わりの現象ってなんで起きたのかな。
神様からのプレゼントだったのかな?
ずっと【鏡の部屋】にいたわたしに、外の世界を体験させてくれたんだ。
いっぱい、色んなことを知った。
お母さんがすっとぼけながらも、莉菜を大事にしていること。ご飯が美味しいってこと。
芹香ちゃんは鏡の中で見ていた通りにしっかりしていて、知らなかったのは恋している姿がかわいいってこと。
鳴海はムカつくって思っていたのに、本当は面倒見がよくて、わたしと莉菜の違いに気づくくらいよく見てくれていたってこと。
どれも全部、大切な宝物になった。
もしかしたら、それがおわりの原因なのかもしれない。
莉菜とわたしで、心が二つになってしまったから。
今までは莉菜の感情が主体で、わたしはあくまで傍観者だった。
見ているだけだったから、なにも感じることはなかった。
莉菜の感情をなぞるように莉菜が楽しければ楽しいし、莉菜がムカつけばムカついた。
でも今は違う。
勉強は大変だけど、一つずつ理解していくのが楽しいし、莉菜は鳴海がムカついていたのに、わたしは今はイイやつだって思っている。
きっと他にも莉菜との違いは発生しているんだ。
……入れ替わっていなかったら。
こうして消えることもなかったのかな。
あのまま【鏡の部屋】から莉菜を見続ける日が、続いていたのかな。
そうだとしても現実の楽しさを知ってしまったことが消えることに繋がったんだとしても、その前に戻りたいとは思わない。
だって、本当に楽しかったから。
「なんで? なんで、こんな突然っっ」
「そうだね。だけど、もともと今日いっぱいで入れ替わりは終わる予定だったんだもの」
「でもっ! それは入れ替わりの話でしょう!? あたしは、入れ替わった後もまた、リナと話せると思ってたっっ!」
うん、わたしも思っていたよ。
だけど不思議と、今は現実を素直に受け止められている。
「莉菜。話せなくても、わたしは莉菜のそばにいるよ。わたしはただ消えるんじゃない。【鏡の部屋】に戻るんでもない。わたしは、わたしは莉菜に帰るんだよ」
「……あたしに?」
「うん、きっとね。だってほら、わたしたちの心、今、繋がっているもの」
時間が経つにつれ、どんどんと気持ちのシンクロは強まっている。
莉菜が心からわたしに消えて欲しくないって思いも、混乱してどうしたらいいのかわからないって思っていることも、痛いほどに伝わってくる。
莉菜とは逆に、この現実を受け入れているわたしの気持ちも、きっと莉菜に伝わっているのだろう。
その気持ちのズレが、ますます莉菜を混乱させているのかもしれない。
そして気持ちのシンクロが進むにつれて、身体の透明化も進んでいる。
もう、あとどれくらいわたしは、この状態を維持できるんだろうか。
完全に消えてしまう前に、ちゃんと莉菜に伝えたい。
「莉菜。短い間だったけど、莉菜として過ごせて楽しかった。現実の世界って、こんなに鮮やかなんだね」

