ミラー☆みらくる!


「わたしってどうして存在しているか、自分でもわからないの。気がついたら莉菜の私室とまったく同じ造りの【鏡の部屋】にいた。違うのは、あくまで鏡の中であるってこと。莉菜の一部だとは思うけれども、莉菜とは心が繋がっているわけじゃない。だから鏡として見て知っていることはあるけれど、莉菜の心を理解しているわけじゃないってこと、かな」

 改めて説明しようとすると難しいなぁ。
 莉菜は感覚的にわかってくれたみたいだけど。
 鳴海は再び考えるように、口元に手を持っていって静かになっていたけど、やがて小さく息をはいた。

「つまり、目の前にいるお前は、楠木の姿をしているけれど、別人ってことだよな?」
「うん……でも完全に別人というよりは、分身とか? わかっていると思うけど、学力とか体力とか、能力的なものは莉菜そのものだよ」
「それで鏡の中にいたけれど、今は外に出てきている、と。それなら、楠木はどうしているんだ?」
「莉菜は、今は【鏡の部屋】にいるの。わたしたち、入れ替わっちゃったの」
「なんで?」
「それは……」

 多分、一番は莉菜がテストが嫌だったからなんだろうけど。
 でもそれを鳴海に言っていいのかな?

 そして入れ替わりの原因はそれだけじゃない。
 きっとわたしが無意識のうちに外に興味を持っていたんだ。

 莉菜が逃げたい気持ちと、わたしが外に出たい気持ち。両方が重なって入れ替わっちゃったんだと思う。
 片方の思いだけじゃ変われないんだ。
 莉菜が繋がらなくて不安だったって言ったあの時、あれはわたしが完全に気持ちが【鏡の部屋】になかったから起きた現象だから。

 そうだとすると、入れ替わりの原因はわたしにもある。
 わたしが、外に興味を持ったことも理由の一つなんだ。

「楠木は、入れ替わって、大丈夫なのか?」
 入れ替わりの理由を言い渋ったわたしに気遣ったのか、鳴海が質問を変えてきた。
「う、うん! 入れ替わっていても鏡を通して会話ができていたから……元気、だよ」
 その言葉を聞いて、鳴海がちょっと安心したような顔をする。

 心配、したんだ。

 さっきから気づいていた。
 鳴海って思った以上に莉菜のことわかっている。

 莉菜のこと嫌っていると思っていたけれど、そうじゃない。
 嫌っていたらこんな心配しないもん。

 莉菜は今、どんな気持ちでわたしたちの様子を見ているんだろう。
 入れ替わりのこと、鳴海に知られたくないって思っていたかな?
 今でも鳴海のことをムカつくやつだって思っているのかな?
 心が繋がっていないから、その辺のことはわからない。

 だからもし、知られたくないと思っていたら、ごめんね、莉菜。
 鳴海が気づいてくれたこと、わたしは嬉しいって思ったんだ。
 今日で最後なんだし、許してね。
 そう、最後なんだ。

「わたしは、今日まで。明日には莉菜が戻ってくるから、心配しないで」
 笑って言おうって思っていたのに、なんだかピクピクとひきつっている気がする。

 悲しいことなんかじゃない。
 元に戻る。それが本来の形なんだから。

 笑え、わたし。これ以上、泣いちゃダメ。