ミラー☆みらくる!

「とりあえず、座れば?」
「う、うん」
 二人掛けのソファの端っこにそっと座ると、思ったより柔らかくて、そのまま後ろへと身体が沈んだ。

「うわわっ」
「不器用過ぎんだろ。ソファに座れないとか」
 クッと笑う鳴海を、思わず睨んでしまう。
「こんなに沈むと思わなかったんだもんっ」
「そうかよ。これ、養護の先生からの差し入れ」
 テーブルにペットボトルのお茶を二本、トンと置いた。
 さっき言われたことを反省しているのか、叔母さんじゃなくて先生と鳴海が言う。

「知らなかったな。養護の先生が親戚だったなんて」
「まぁ、芹香以外知らないかもな。別に隠しているわけじゃないけど。あの人も苗字、鳴海だし」
「そうなんだ」
 保健室ってよっぽどじゃないと行かないし、莉菜は健康そのものだったから、本当に縁がないんだよね。

「じゃあ、一本、もらうね」
 きっと冷蔵庫で冷やしてあっただろうペットボトルは、汗をかいて濡れていて、まだ冷たかった。
 走ったり泣いたりして渇いた喉に注ぐと、呼吸しやすくなった。
 向かいのソファに鳴海も腰かけて、同じようにお茶を飲む。
 さっきまで鳴海から逃げていたのに、こうして向きあっているなんて変なの。

「落ち着いたか?」
「……うん」
 それっきり、鳴海は黙り込んでしまった。
 外では遠くに賑やかな声がしているだろう気配はするのに、この部屋は下駄箱から遠いし人気がしないから、まるで時間が止まっているみたい。

「授業、はじまっちゃうね」
「大丈夫だろう。適当にごまかしておいてくれるよ」
 シレッと言い放ってペットボトルを傾けた。
 授業をサボっちゃうことになるだろうとわたしは少しビクビクしているのに、なんでそんな落ち着いていられるんだろう。

「もしかして、慣れてる?」
「こんなことやったことねーよ」
「本当かなぁ」
 思わずクスッと笑うと鳴海も少し表情が和らいだのに、またもや黙り込んでしまった。

 わたしとしても、なにを話していいのかわからなくて、ただただお茶をチビチビと飲む。
 潤っているはずなのになんだか落ち着かなくて、意味もなくペットボトルの側面をキュッと撫で続ける。

「俺、変なこと、言ってもいいか」
「え……?」
 変って、どういうこと?

 思わず顔を上げたら、こちらをじっと見ている鳴海と目が合った。
 さっきから見せる真剣な表情が、いつもと違う。
 どうしたんだろう。

「最近のお前、なんか違う。どこがってハッキリ言えないけど、楠木のはずなのに、違和感が拭えない」
「――‼」

 思いもしなかった言葉に、わたしは思わずコクン、と喉を鳴らした。