ミラー☆みらくる!

 なんで? なんでこんなに胸が苦しいの?
 別に【鏡の部屋】に戻っても、もとの生活に戻るだけ。そうわかっているのに……。

「待てってっ!」
 必死で走っていた後ろから、強く腕を掴まれた。
 振り返らなくてもそれが鳴海だってことはわかっている。

「離してっ」
 こんな顔、見られたくないから飛び出したのに。
 整理つかない感情を持て余したから、逃げてきたのに。
 なんで追いかけてくるの?
 掴まれていないもう片方の手で頬を拭いながらも、顔を上げることはできない。
 切らした息を整える、お互いの呼吸音だけが聞こえる。

 どのくらいそうしてただろう?
 時間してほんの一、二分かもしれない。
 それでも鳴海は、腕の力をちっとも緩めてくれなかった。

「……痛い」
 さすがにそう訴えたら、慌てて離してくれた。
「悪い……」

 こんなぐちゃぐちゃな顔と、ぐちゃぐちゃな心のまま、何もなかったように教室には戻れないけど、今更また走り出す気力はもう、ない。
 ただその場に立ちつくしたわたしの手を、今度は優しく引っ張った。

「鳴海?」
「もうすぐみんな登校してくる時間だろう。その前に移動しよう」
「移動って、どこに」
「まぁ、とっておきの場所があるんだよ。今日なら大丈夫じゃないかな」
 とっておきの場所?
 普段のいやみったらしい皮肉な顔じゃなく、いたずらっぽく笑う鳴海は、いつもより幼く見えた。