教室に入ると、鳴海はいつもの席で待っていた。
朝勉はじめてからの定位置。窓際の一番前に後ろ向きで。
たった数日なのにその景色が当たり前すぎて、なんだかホッとする。
「ちゃんと拭いたか?」
「うん、ありがとう。タオルは……洗って、返すね」
返すのは、わたしじゃないけど。
手にしていたタオルを思わず両手で強く握りしめる。
鳴海が向けてくれた優しさが、心にスッと染み渡る。
こうして人に優しくされることも、もう、ないんだ。
こうして朝、一緒に勉強することも、もう、ないんだ。
勉強して怒られることも、さっきみたいに嫌味っぽく言われることも。
皮肉気に笑う顔も、時折見せる真剣な顔も。
全部全部、もう、これで終わりなんだ。
「……どうした?」
鳴海が驚いた表情をして、席から立ち上がっていた。
「え? なんにも……」
なんにもないと言おうとして、タオルを握りしめた手に、雫が落ちたことに気がついた。
「あれ? まだちゃんと拭けてなかった、かな」
違う……。
これは、雨じゃない。
そっと指を頬に持っていけば、濡れていることを実感する。
そっか。これが、泣く、ってことなのか。
莉菜が泣いている姿を見ていた時さえ泣けなかったのに、なんで今泣いているのかわからない。
でも、胸の奥がギュッとして、こらえきれないものがある。
最後の日なのに。だからしっかり勉強したかったのに。
「ごめんっ」
その場にいるのが苦しくて、たまらなくなって。
鳴海の顔をみられなくって、わたしは教室から飛び出した。
朝勉はじめてからの定位置。窓際の一番前に後ろ向きで。
たった数日なのにその景色が当たり前すぎて、なんだかホッとする。
「ちゃんと拭いたか?」
「うん、ありがとう。タオルは……洗って、返すね」
返すのは、わたしじゃないけど。
手にしていたタオルを思わず両手で強く握りしめる。
鳴海が向けてくれた優しさが、心にスッと染み渡る。
こうして人に優しくされることも、もう、ないんだ。
こうして朝、一緒に勉強することも、もう、ないんだ。
勉強して怒られることも、さっきみたいに嫌味っぽく言われることも。
皮肉気に笑う顔も、時折見せる真剣な顔も。
全部全部、もう、これで終わりなんだ。
「……どうした?」
鳴海が驚いた表情をして、席から立ち上がっていた。
「え? なんにも……」
なんにもないと言おうとして、タオルを握りしめた手に、雫が落ちたことに気がついた。
「あれ? まだちゃんと拭けてなかった、かな」
違う……。
これは、雨じゃない。
そっと指を頬に持っていけば、濡れていることを実感する。
そっか。これが、泣く、ってことなのか。
莉菜が泣いている姿を見ていた時さえ泣けなかったのに、なんで今泣いているのかわからない。
でも、胸の奥がギュッとして、こらえきれないものがある。
最後の日なのに。だからしっかり勉強したかったのに。
「ごめんっ」
その場にいるのが苦しくて、たまらなくなって。
鳴海の顔をみられなくって、わたしは教室から飛び出した。

