ミラー☆みらくる!

 昨日はうっかり莉菜と繋がることを忘れて眠ってしまったから、今日は急いで夕食とお風呂を済ませた。

「莉菜、ごめん!」
 卓上鏡に向かって話しかけるけれど、反応がない。

「莉菜? 怒ってるの?」
 卓上鏡に顔を近づけてみても、そこにはわたしの姿が映るだけ。
 おかしい……なにより入れ替わってからこの鏡は小さな粒子がずっとキラキラ光っていたのに、今は普通の鏡と変わらない。
 どうしたんだろう?

「莉菜ーっ。起きてるー?」

『……ナ』

 か細く声が声が聞こえたと思ったら、鏡が少しずつ光りはじめた。
 それとともに、鏡に映るのがわたしの姿から莉菜の姿にかわった。

「あ、よかった! ごめんね、昨日はうっかりしちゃって……って、莉菜!? どうしたの?」
 莉菜の姿が映し出されたと思ったら、莉菜はぽろぽろと泣き出してしまった。

『あ、あた、あたしっ、怖かった! すごく怖かった!』
「怖い? なにがあったの?」
 鏡の中には危ないこととかは何もないはず。そこにいて怖いことってなにがあったの?
 莉菜はしゃくりあげて泣くから、なかなか声にならない。

「まず、落ち着こう。ね」
 実体があるもの同士ならこういう時、触れて落ち着かせることが出来る。
 でもわたしたちは鏡越しでしか関われないから、こういう時なにもしてあげられない。
 なんて無力なんだろう。
 とにかく声をかけ続けていると莉菜は少しずつ落ち着いてきたみたいで、大きく深呼吸をした。

『ごめんね。もう、大丈夫』
 そう笑うけれど、その笑顔はぎこちなく見える。

「本当? でも怖いって、なにがあったの?」
『昨日……リナが戻ってきてから、あたしは一生懸命鏡に向かって話しかけていたの』
「え!?」
 わたしはうっかり莉菜に話しかけるのを忘れていた。
 けど、莉菜が話しかけてくれていたんだ。

「ごめん。全然気づかなくって」
『うん。どんなに呼んでも、あたしの声はリナに届かなかった。最初は、たまたまなのかな? って思っていたの。でも、何度話しかけてもダメで、今朝になってもダメだった』
「朝は、わたしも莉菜のことが気になっていたけれど、朝勉の時間に間に合わないと思ってたから、ごめん」
『うん。見てた。それでずっと話しかけてた。学校のトイレでも、下校ルートにある道路のカーブミラーからも。鏡という鏡、映るものすべての場所から話しかけていたのに、あたしの声は届かなかった』
「え……?」

 確かに言われてみれば鏡なんて日常いろんな場所にある。
 でもわたしは今日、一体どれだけそれらの鏡を意識しただろう?
 特に見ることもなかった。
 芹香ちゃんと話すことが楽しくて、勉強も楽しくなってきて。
 日常生活の楽しさにすっかりと浮かれていた。