ミラー☆みらくる!

 それに気が付いたのは朝起きて、身支度を整えていた時だった。
 わたし、昨日は莉菜と話していない!
 莉菜のことは気になりつつも朝勉の時間を考えるとゆっくり話している時間はない。
 とりあえず帰ってきてからゆっくり話そう。
 そう思って家を飛び出した。

 今日こそはわたしの方が先だと思ったのに、下駄箱を確認したら鳴海のスニーカーがおさまっている。
 普段朝練には来ないけど、鳴海って朝強いんだなぁ。

 教室に入れば昨日と同じように窓際の席に座っていて、軽く手をあげるから挨拶を返す。
 時間が惜しいとばかりに席に座るなり問題を用意されたから、すぐさまそれにとりかかる。
 雑談の隙間さえ与えられなかった。
 まぁ何を話すんだと言われると、わたしたちの間に話す出来事ってほとんどない。
 出来るとしたら共通の相手である芹香ちゃんの話くらい。
 でも今、その話を振ったとして「雑談してる暇あるなら手を動かせ」って言われそう。
 
 きっとこんなに机に向かっているのは、莉菜の人生ではじめてだ。
 正直、頭がショートしそうになるくらいだけれど、同時に運動とは違う疲れが心地いいとも思う。
 少しずつ、少しずつ覚えていくこと。少しずつ、少しずつ解けていく問題。
 その少しの進歩が目に見えてわかることに喜びを感じるのは、陸上のタイムが縮むのと同じかもしれない。
 まぁ、今までがサボり過ぎっていうのもあるんだけどね。

 チラッと前に座る鳴海を見れば、窓の外を眺めていた。
 連帯責任とは言えこんな朝早くから勉強につきあってくれて、しかもこの解いている問題は鳴海の手作りだ。
 ってことは、昨日の夜に準備しているんだよね。
 それを考えるだけで、かなりマメだと思う。

「……終わったのか?」
 視線に気づいたのか外を見ていた鳴海がこっちを向くから、ビックリして思わず大きく首を横に振る。
「ま、まだっ!」
「じゃあよそ見してんなよ。ほら、手動かせ」

 あ、やっぱり手を動かせって言われた。
 予想通りの言葉に思わず笑ってしまう。

「はぁい」
 そういえばわたしの勉強ばかりに付き合っているけど、自分の勉強は大丈夫なのかな?
 こうしてペアを組まされているということは成績優秀なんだろうけど。

「ねぇ、自分の勉強は大丈夫?」
「あぁ、それほど範囲も広くないし、こうして教えたりとかまとめてることで復習にもなっているから、案外自分のためにもなっている」
 なんてことはないというように言うけれど、それって日頃がちゃんとしているからなんだろうな。