「ちょっとだけ、ちょっとだけ芹香ちゃんが鳴海のことをいいやつって言ってたの、わかるよ」
今この時間、本当は鳴海がついてこなくったってよかったんだ。
でも多分、自分がうっかり口を滑らしたことを気にしているんじゃないかな。
そう思ったから口にしたんだけど、何故か芹香ちゃんも鳴海も、口をぽかんと開けて固まってしまった。
「え? どうしたの?」
「あ、ごめん。まさか莉菜がそんなこと言うなんて思わなかったから……」
芹香ちゃんの言葉で金縛りがとけたみたいに、鳴海も頭を大きく横にふる。
「……とりあえず、今日の宿題は英単語と漢字な。明日の朝、テストするから」
それだけ言って、鳴海はそそくさと音楽室を出ていってしまった。
「なに、あれ」
今度はわたしが呆気にとられる番だ。なんでいきなり帰っていったんだろう?
鳴海が出ていった背中を見送った芹香ちゃんが、吹き出すように笑った。
「どうしたの? 芹香ちゃん」
「ううん。遥人って面白いでしょ?」
「よくわからない、かなぁ。面倒見よさそうとは思うけれど、なに考えてるかさっぱりわからない」
「そっか。でも二人がちょっと仲良くなったみたいで嬉しいよ」
「仲良くなったかは、微妙かな」
だって今もさっさと帰っちゃったしね。
連帯責任だから面倒見てくれているだけで、鳴海の本当の気持ちはわからない。
「ま、ペア組んでいるうちにお互いのコトわかるかもね。遥人も帰ったし、私たちも帰ろっか」
「うん、そうだね」
帰り道、芹香ちゃんは今まで話せなった分を埋めるかのように、ずっと竣人さんの話をしていた。
子どもの頃の話から、最近のノロケ話まで。
そんな芹香ちゃんはかわいくて、そして少し大人に見えた。
帰ってからも勉強しながらつい芹香ちゃんの話を思い出しては思わずにやけてしまい、そのたびに鳴海が『そんな場合か』と言っている声が聞こえてくるような気がした。
集中集中と、机に向かいながらシャーペンを走らせていたわたしは、この日すっかり忘れていた。
【鏡の部屋】にいる莉菜に声をかけることを。
今この時間、本当は鳴海がついてこなくったってよかったんだ。
でも多分、自分がうっかり口を滑らしたことを気にしているんじゃないかな。
そう思ったから口にしたんだけど、何故か芹香ちゃんも鳴海も、口をぽかんと開けて固まってしまった。
「え? どうしたの?」
「あ、ごめん。まさか莉菜がそんなこと言うなんて思わなかったから……」
芹香ちゃんの言葉で金縛りがとけたみたいに、鳴海も頭を大きく横にふる。
「……とりあえず、今日の宿題は英単語と漢字な。明日の朝、テストするから」
それだけ言って、鳴海はそそくさと音楽室を出ていってしまった。
「なに、あれ」
今度はわたしが呆気にとられる番だ。なんでいきなり帰っていったんだろう?
鳴海が出ていった背中を見送った芹香ちゃんが、吹き出すように笑った。
「どうしたの? 芹香ちゃん」
「ううん。遥人って面白いでしょ?」
「よくわからない、かなぁ。面倒見よさそうとは思うけれど、なに考えてるかさっぱりわからない」
「そっか。でも二人がちょっと仲良くなったみたいで嬉しいよ」
「仲良くなったかは、微妙かな」
だって今もさっさと帰っちゃったしね。
連帯責任だから面倒見てくれているだけで、鳴海の本当の気持ちはわからない。
「ま、ペア組んでいるうちにお互いのコトわかるかもね。遥人も帰ったし、私たちも帰ろっか」
「うん、そうだね」
帰り道、芹香ちゃんは今まで話せなった分を埋めるかのように、ずっと竣人さんの話をしていた。
子どもの頃の話から、最近のノロケ話まで。
そんな芹香ちゃんはかわいくて、そして少し大人に見えた。
帰ってからも勉強しながらつい芹香ちゃんの話を思い出しては思わずにやけてしまい、そのたびに鳴海が『そんな場合か』と言っている声が聞こえてくるような気がした。
集中集中と、机に向かいながらシャーペンを走らせていたわたしは、この日すっかり忘れていた。
【鏡の部屋】にいる莉菜に声をかけることを。

