ミラー☆みらくる!

「あーっもう、恥ずかしい! とにかくきっかけはそこで、私の中で竣にいが、『お兄ちゃん』から『意識する人』に変わったの」
 照れてもう顔があげられないみたいに、ピアノの蓋の上で顔をうずめるように隠しちゃった。

 今日はいっぱい照れている芹香ちゃん、かわいいなぁ。
 それにしても『お兄ちゃん』から『意識する人』かぁ。
 恋心ってそうやって芽生えていくのかな。

「今は『竣人さん』って呼んでるんだ?」
「うん。『竣にい』だと子どもの頃の距離感のままのような気がして、嫌だったんだ」
「素敵だね」
「……まぁね」
 まだ恥ずかしそうだけど、照れながらも芹香ちゃんは顔を上げて笑った。

「なにが素敵なもんか。巻き込まれるこっちの身にもなれってんだ」
 面倒くさそうに鳴海が髪の毛をかきながら、芹香ちゃんにジトッとした視線を投げた。

「急にうちに押しかけてくるようになったと思ったら、アニキが今好きなものはなんだとか、カノジョはいそうなのかとか質問攻めにしてきた挙句、クリスマスやバレンタインには呼び出してくれとか、自分でやれっつーの」
「いいでしょーっ! 恋するオトメになったら竣人さんに気軽に話しかけられなくなっちゃったんだもん」
「くっついてくれた時にはホッとしたよ。やっと解放される! って」
「悪かったわね。竣人さんとしても、私が小学校卒業と自身の受験が終わるまでは、線引いておきたかったんだって」
「あっそ」
 投げやりな鳴海の返事にも、芹香ちゃんが嬉しそうに笑う。
 あぁ、恋するとこんな表情するんだなぁ。

「芹香ちゃん、幸せそう」
「まぁね。竣人さん、年上ってのもあるのかもしれないけど、大人だし、優しいし」
「みたいだね。鳴海と兄弟なんて信じられな……っ」

 思わず口が滑って慌てて塞いだけどもう遅い。
 鳴海が明らかに不機嫌そうな顔してこっちを見ている。
 そんな鳴海を見てニヤニヤしながら芹香ちゃんが立ち上がって、わたしのそばにやってきた。

「だよねぇ。遥人も本当はいいやつなんだけど、どうにも素直じゃなくてね」
「俺はいつでも素直だよ」
「よく言うわ。いっつも莉菜にあんな憎まれ口叩いちゃってさ」
「余計なお世話だ」

 確かに鳴海は莉菜によくつっかかってきていた。
 莉菜もそれに対してムカついていたし、見ていたわたしも気持ちよくはなかった。
 だけどペアを組むようになってから感じるのは、なんだかんだと面倒見のいいやつなんだろうなってこと。
 まぁ、莉菜が赤点取れば自分も大会出られないんだから、必死になるのは当たり前かもしれないけどね。