両手いっぱいの大好きを。

「虹いるー?あれっ⁉︎いない⁉︎」

そう可愛らしい声が、教室に響く。

周りから、「相変わらず橘さんって
可愛いなー」とか、「モデルみたい」って
声が聞こえてくる。

彼女は(たちばな)花美(かよ)

1つ隣のクラス。

容姿端麗・いわゆる絶世の美少女だ。

ぷっくりとした桃のような唇に、明るめのサラサラのロングの髪。
それにぱっちり二重の小顔だ。

虹くんと並べば、まさに美男美女。

幼馴染でもあるらしい。

花美ちゃんがいる限り、
私の恋は、絶対叶わない。

その時、虹くんが帰って来て、私と
ばっちり目が合った。

私は、つい目を逸らしてしまった。

でも、関係ない。キミは花美ちゃんが
いるんだから…。

目を逸らした一瞬、虹くんが少し
悲しそうな顔をしたのは、多分気のせい。

「あー‼︎虹‼︎連絡したのに‼︎電話まで‼︎
ほんっとにどこ行ってたのよっ‼︎」

「食堂だけど、何」

「冷たいなぁ…もっと優しくして‼︎」

花美ちゃんは、虹くんと距離を縮め、
頬を膨らませて、むっと怒ったような顔をした。

自然とあんな可愛い顔ができるのが、
羨ましい。

「花美は無駄話多すぎ。で?本題は?」

「昨日、月寄(つきよせ)先生が英語の授業で辞書使うって言ってたじゃん?
それ、忘れたから貸して!」

月寄先生というのは、私達のクラスの担任、月寄(つきよせ)明凛(あかり)先生のこと。

低めのポニーテールで、清楚な雰囲気をまとっている、とってもきれいな先生。

「はぁ…いつも何かしら忘れてるよな…はい、これ。」

「ありがとーっ!!頼りにしてるよーっ!」

虹くんの手から辞書を奪い取るように受け取り、
あざとくお礼をして帰っていった花美ちゃん。

虹くんが疲れたように「はぁ…」とため息をついた。

話しかけようか迷ったその時…