両手いっぱいの大好きを。

虹くんだったー。

「驚きすぎでしょ。今来たとこ。」

ひ、ひえぇ…じゃあ今の独り言、聞かれてたの!?

恥ずかしくて、つい下を向いてしまう。

「ねぇ、何が早く始まってほしいの?」

いつもと違う虹くんの声が降ってくる。

多分だけど、今、虹くんは意地悪に笑っていると思う。

「教えてくれない?愛里清ちゃん。」

「ぇ、虹、くんっ…!?」

虹くんの大きな手が、私の顎に添えられた。

そして、クイッと上げられ、ばっちり目が合った。

やっぱり、虹くんは意地悪そうな笑みを浮かべていて。

また、そのいつもとのギャップに胸のときめきが加速した。

「あ、あの、こ、虹くん…?」

その時、教室の扉が勢いよく開いた。

びっくりして、虹くんと距離を取る。

「あら、2人とも早いのね。」

入ってきたのは、月寄先生だった。

「はい。」

虹くんは、さっきのことがなかったかのように落ち着いている。

「夏凪さん、胡依さんの勉強、見ていてくれませんか?」

「…へっ?」

つい驚きで間抜けな声が出てしまった。

「分かりました。責任を持って、胡依さんが基本は自力で解けるくらいにします。」

「ええ、期待してるわ。胡依さん、あなたも頑張るのよ。」

そう言い残して、月寄先生は教室を出ていった。