爆走令嬢アンナの「規格外」な無双劇 〜婚約破棄され失恋しましたが、私の物理(拳)でどうにかします〜

「どうしたの?リリィ」

「なんであんた……泣いてるのよ!」

焦ったようにそう言ったリリィの言葉を聞いて、わたしは驚いた。
それとともに、頬に冷たいものが伝う感触を感じる。

目元に触れると、手が濡れた。涙だった。

「あれ、ほんとだ……なんでだろう」

「自分でも理由がわからないのね……私には何となく分かるわ」

そう言いながら私の涙をグイッと少し乱暴に拭うリリィ。

「あ、気を取り直して、何か注文しましょう。そのためにここに来たんだから」

リリィはそう言って、メニュー表を何度かタップして魔力で注文をお店の厨房に飛ばしたようだった。

わたしはあんな風にに軽々しく魔力を使おうとしても、注文を飛ばす前に意識を飛ばしちゃうからな……。

魔力が使えない人やない人のために呼び鈴は設置してあるけれど、正直絶対魔法のほうが楽だし。

「わたしも、魔力があればよかったのかな?」

思わずポツリと呟いた言葉。

「急にどうしたのよ」

「だって、魔力があればゼノ様とお別れしなくてすんだかも……それに、何かと便利」

「……。あれ見てみなさい」

リリィはそう言いながら、少し離れている席に座っているかップルを指さした。

「愛の誓いを風に乗せて伝えあってるわ。あっちは、魔法のちょっとした花火だけでキャーキャー言うバカップル。アンナはあんな風になりたかったの?あんなのただの魔力の無駄遣いよ。それに、あれだけの小さい魔法なんてしょーもない」

ズバズバとそう言うリリィの言葉はわたしの胸に一つずつ突き刺さる。

「そういうわけじゃないけど……」

「ならいいじゃない。アンナには魔力がなくても、積み上げてきた結果があるでしょう?」

「……」

リリィの真っ直ぐな言葉にわたしは黙り込んだ。

リリィの言う通りだ。自分にないものを欲しがって、筋肉から目をそらすなんて言語道断、最低だ。

「そうだよね……わたしは筋肉を信じるよ」

笑顔でそう言うと「その意気よ!」元気づけるようにそう言ってくれる。

ふふふ。リリィって物凄くストレートできつい印象もあるけど、本当は不器用なだけで優しい子なんだよね。

わたしはリリィを見つめながら肩肘を付いてそんな事を考えていた。