爆走令嬢アンナの「規格外」な無双劇 〜婚約破棄され失恋しましたが、私の物理(拳)でどうにかします〜

しかし、そのぶん体術だけが異常に伸びた。

お父様に鍛えられて、転んでも泣いても何度でも立ち上がった。

そのたびにゼノ様は困ったように眉を下げて言う。

『アンナ、無茶しすぎだよ……』

その声には、いつも本気の心配が滲んでいた。

だから、わたしはお父様に習って武道の練習を沢山した。

もしかしたら魔力が大きくなるかもしれない、少ない理由がわかるかもしれないと言う理由で魔導学院にも通わせてもらっているけど……。
魔力がないせいで浮きっぱなし。

浮かないように頑張って、困っている人を一生懸命助けていたら、ゼノ様には『危なっかしい』と言われるし……。

そう思った途端、また胸の奥キュッっと傷んだ。

「もう、やだよ……考えたくない」

枕に顔を押し付ける。
涙がじわりと溢れ、布をどんどん濡らしていった。

息を吸う度に苦しくなって、吐く度にゼノ様の言葉が蘇る。

『別れよう』

『反対すぎたんだよ、何もかも』

「嫌ですよ、ゼノ様……どうして?」

泣いても意味がないのに、勝手に涙が落ちていく。

少し前にゼノ様がくれた大きなぬいぐるみを抱きしめ、丸くなる。

すると、その時の記憶もみるみる蘇ってきた。

「ゼノ様……」

名前を読んでも返事が来ないのは分かっている。
けれど、どうしてもその名前を呼んでしまいたくなる。

……その、大好きな名前を。

目を閉じると、瞼の裏にゼノ様の姿が浮かんだ。
かと思うとその姿は消え、また浮かぶ。

次第にまぶたが重く、開かなくなり、意識がどんどんと沈んでいく。

「いか、ないで……」

夢か現実かわからない場所で、その言葉は溢れた。

そして、わたしは深い眠りに落ちていった。