爆走令嬢アンナの「規格外」な無双劇 〜婚約破棄され失恋しましたが、私の物理(拳)でどうにかします〜

芝生の上に落ちていく涙が、傾く太陽に照らされてキラリと光る。

大きな鳴き声を上げる気力もなく、ただその場で肩を震わせヒックヒックとしゃくりあげる。

ゼノ様からもらった、最後の贈り物。

本当は嬉しいはずなのに、こんなにも苦しい。

しばらく動けなかった。
ただ、ずっと涙を流していた。

時間が止まったみたいに、静かな世界。

やっとの思いで立ち上がると、目の前に広がる世界は絵の具のように滲んでいた。

「戻ろう」

ポツリと一人呟いて、のそのそと歩き出す。

偶然か必然か、庭から部屋に戻る間誰かに出会うことはなかった。

今は日が沈む前だから、きっとみんな夕食の準備や洗濯物の取り込みで忙しいんだろう。

部屋に辿り着き、扉をゆっくりと閉める。

ゼノ様からの贈り物を机の上に乱暴に置く。

ふかふかのベッドに倒れ込んだ瞬間、何かがぷつりと切れた音がしてさっきと同じ思いがブワッと込み上げてくる。

「なんで、なんだろう……なにも、うまくいかない」

乾いた笑みがこぼれた。

ゼノ様の言葉が、頭の中で何度も反響する。

『君の危なっかしい姿を見ていたら、胃も体も持たない』

そんなの、分かっていた。

学校の中でゼノ様と一緒に過ごすときは、できるだけ大人しく、後ろで下を向いていた。

けれど、人が困っているところは放っておけなかった。

だから、すぐに飛び出して(力で)解決していた。

わたしは、魔力が雀の涙程度しかない。
つまり、使えるほどの魔力はないということ。

これだけ魔力がなくて、ダメダメなのはわたしだけだった。

うちは代々、魔力も体術も優れた公爵で騎士の家系だ。
でも、魔力がこれだけ少ないのはわたしだけだった。