爆走令嬢アンナの「規格外」な救世劇 〜婚約破棄され失恋しましたが、私の物理(拳)でどうにかします〜

「アンナ……僕達婚約を取り消そう」

夏季の長期休業期間。

わたし、アンナ・エボリューションは、幼馴染で婚約者のゼノ・ストラテギウス様とうちの庭でお茶していた。
そんなときにゼノ様にそう告げられる。

「へ?ゼノ様、今なんと仰いましたか?」

「婚約を取り消したいと、申した。僕達は性格が合わなすぎる……父上と母上にはもう許可はもらっているよ。君と僕は戦い方も性格も反対すぎたんだ」

そう言うゼノ様に、マカロンを口にしながら首を傾げた。

「ですが、ゼノ様。わたしのことを褒めてくださったじゃないですか……そこまで違うとも、わたしは思いません」

「アンナはそうかもしれない。けれど、僕は違うんだ。それに、婚約者としても幼馴染としても君の危なっかしい姿を見ていたら、胃も体も不安で持たない………別れてほしい」

小さい頃から決められていた婚約者との別れに、わたしはとても戸惑った。

「わ、分かりましたわ」

そう言うと、ゼノ様は安堵したように息を吐き、立ち上がった。

「今日は婚約者として最後の日だから……と言ってもなんだけど、君にプレゼントがあるんだ」

ゼノ様はそう言って後ろから手を回し大きなクッキー缶とわたしが大好きなお菓子が詰められた透明な大きな袋を手渡される。

「これ……全部ですか?」

「あぁ。本当は来週の誕生日に渡すつもりだったんだけど、君とは婚約破棄するし……来週は旅行があるんだ。それに、この休業期間はもう会うことはないだろうから」

わたしは自分の複雑に絡んでいる気持ちに気が付かなかったふりをして、椅子から立ってお辞儀をした。

「ありがとうございます」

「いいよ。じゃあね、アンナ。これからは幼馴染としてよろしく」

そう言い去っていくゼノ様。

ゼノ様の背中が見えなくなった途端、わたしは芝生の上に崩れ落ちたのだった。