夏季の長期休業期間。
エボリューション家の庭に、紅茶の香りと甘い菓子の匂いが静かに漂っていた。
わたし――アンナ・エボリューションは、幼馴染であり婚約者でもあるゼノ・ストラテギウス様と向かい合って座っていた。
いつもと変わらない、穏やかな午後になるはずだった。
その一言を聞くまでは。
「アンナ……僕達、婚約を取り消そう」
マカロンを食べ進めていた手が、ピタリと止まる。
「へ? ゼノ様、今なんと仰いました?」
わたしの声が、動揺で震えてしまっていることは、すぐに分かった。
けれど、驚き以上にショックがとても大きい。
「婚約を取り消したいと申した。僕達は性格が合わなすぎる……反対すぎたんだよ、何もかも」
淡々とした声が、胸に響く。
けれど、その奥にある決意だけは痛いほど伝わってきた。
心がぎゅっと縮む。
「ですが…わたしのことを褒めてくださったじゃないですか……そこまで違うとも……」
「アンナはそうかもしれない。けれど僕は違うんだ。それに、婚約者としても幼馴染としても、君の危なっかしい姿を見ていたら胃も体も持たない……別れてほしい」
ゼノ様が発した一言一句、全てが胸にグサグサと、ナイフよりも鋭く突き刺さる。
幼い頃から当然のように隣にいた存在が、今、手の届かない場所へ行こうとしている。
わたしは息を吸うことも忘れ、じっとゼノ様を見つめた。
ゼノ様は、わたしの目を見ないように視線を落としていた。
膝の上で握られた手が、白くなるほど強く握られている。
迷っている。苦しんでいる。
それが伝わってきた。
エボリューション家の庭に、紅茶の香りと甘い菓子の匂いが静かに漂っていた。
わたし――アンナ・エボリューションは、幼馴染であり婚約者でもあるゼノ・ストラテギウス様と向かい合って座っていた。
いつもと変わらない、穏やかな午後になるはずだった。
その一言を聞くまでは。
「アンナ……僕達、婚約を取り消そう」
マカロンを食べ進めていた手が、ピタリと止まる。
「へ? ゼノ様、今なんと仰いました?」
わたしの声が、動揺で震えてしまっていることは、すぐに分かった。
けれど、驚き以上にショックがとても大きい。
「婚約を取り消したいと申した。僕達は性格が合わなすぎる……反対すぎたんだよ、何もかも」
淡々とした声が、胸に響く。
けれど、その奥にある決意だけは痛いほど伝わってきた。
心がぎゅっと縮む。
「ですが…わたしのことを褒めてくださったじゃないですか……そこまで違うとも……」
「アンナはそうかもしれない。けれど僕は違うんだ。それに、婚約者としても幼馴染としても、君の危なっかしい姿を見ていたら胃も体も持たない……別れてほしい」
ゼノ様が発した一言一句、全てが胸にグサグサと、ナイフよりも鋭く突き刺さる。
幼い頃から当然のように隣にいた存在が、今、手の届かない場所へ行こうとしている。
わたしは息を吸うことも忘れ、じっとゼノ様を見つめた。
ゼノ様は、わたしの目を見ないように視線を落としていた。
膝の上で握られた手が、白くなるほど強く握られている。
迷っている。苦しんでいる。
それが伝わってきた。



