イケメン兄弟はわたしに夢中!?〜幼なじみが家族になった〜

 ――ああ、わたし、千聖くんのことが好きだ。

 朝からずっと無視されて、悲しかった。
 不機嫌そうな千聖くんを見てるのは嫌だった。
 わたしは千聖くんが笑ってないと、嫌だ。
『仲の良い幼馴染』のまんまじゃ、嫌だ。

 幼馴染じゃなく、一人の男の子として、彼のことが好きだ。

 言葉に言い表せないエネルギーが腹の底から沸き上がり、身体の隅々まで満たしていく。

 好き。好き。――大好き。
 そう思ったら、自然と唇が開いていた。

「千聖くん。わたし――」
 衝動に任せて言いかけた、そのときだった。

「成海くーん」
 叫び声が聞こえた。
 振り返れば、体育館を背景にして、春川さんが走ってくる。
 体育の時間に合わせてポニーテイルにした黒髪を揺らして。
 クラスの誰よりも可愛い女の子が、体当たりするように千聖くんに抱きつく。

 ズキッと、胸が痛んだ。

「さっきの、凄かったー! 本当に格好良かったよ! 惚れ直しちゃった!」
「くっつくな! 離せ!」
「やだ、もう遠慮しないって決めたもーん」
 腕を振り払われた春川さんはめげることなく、千聖くんの左手を掴んだ。

「ごめん来見さん、先に教室、行っててくれる? わたし、成海くんとお喋りしたいんだあ。わかるでしょ? 空気読んでもらえないかなあ」
 びっしりとまつ毛が生えた、アーモンド形の目がわたしを見つめる。
 羨ましいくらいにまっすぐな、艶やかな髪が、気持ちよさそうに風にふわふわ揺れている。

 うん、わかった。
 そう言うべきなのだろう。

 シンデレラになれないモブは空気を読んで、美しいお姫様に王子様を譲るべきなのだろう。
 ――でも。