イケメン兄弟はわたしに夢中!?〜幼なじみが家族になった〜

 わたしが教室に入ってから、十分後。
「置いて行ったな」
 千聖くんは自分の席にランドセルを置くなりわたしの前にやってきて文句を言った。
「だって、わたしがいるとお邪魔だったでしょ。空気を読んだだけだよ」
「空気なんて読まなくていいよ。あの後、春川の奴、おれにベタベタ引っ付いてウザかったんだから」
 あ、千聖くん、『さん』付けするの、止めたんだ。
 本人から『さん』付けしなくていいよって言われたのかな。
 春川さんとどんな話をしたんだろう。
 正直に言うと、ちょっとだけ。
 ううん、本当はすごく、気になった。
「そんなこと言っちゃだめだよ。春川さんの気持ちはわかってるんでしょ?」
 優夜くんでさえ気づいたのだ。
 好意を向けられている千聖くん本人が気づかないわけがない。
 それほど千聖くんは鈍感ではなかった。
「……まあな」
 千聖くんは少々気まずそうに目を逸らした。
「でも、もし告白されたとしても。おれは春川と付き合う気なんてねーよ」
 そのとき確かに、心のどこかで喜んだわたしがいたのに。
「なんで?」
 つい反射的に口が動いて、聞いてしまった。
「春川さん、可愛いのに。付き合えばいいじゃない」
「…………」
 千聖くんは口をへの字に曲げてから、鋭い目でわたしを睨んだ。
「愛理はおれと春川が付き合ってもいいのかよ」
「うん。千聖くんが好きなら、それでいいと思う」
 ズキズキ。
 なんでかな、胸が痛い。
「……あっそ。わかった」
 千聖くんは、ふいっと顔を背け、自分の席に戻っていった。