イケメン兄弟はわたしに夢中!?〜幼なじみが家族になった〜

『なら急がないとまずいな。おれも急いで家を出るから、玄関前に集合な』
「うんっ!」
 わたしは電話を切ってベッドから飛び下りた。
 カーテンが閉め切られた薄暗い部屋の中で服を着替える。
 脱いだパジャマをベッドの上に放り投げ、シャツを着て、その上にパーカーを羽織ってズボンを履いた。
 机の横のフックに引っ掛けていたランドセルを背負い、ドタドタと足音を立ててリビングへ行く。
 リビングの棚には亡くなったお母さんの写真が飾られている。
 端っこに置かれたテレビからは明るい音楽が流れ、天気予報が表示されていた。
 4月18日、今日の天気は晴れ。
 でも、酷い夢を見てしまったわたしの心の中はちっとも晴れじゃない。
 晴れどころか土砂降り、今年最大の台風が吹き荒れている。
「おとーさんごめん、予知夢を見たの! 朝ごはんは帰ってから食べるから冷蔵庫に入れといてっ!!」
 エプロン姿でキッチンに立っているお父さんに叫ぶ。
 それから、わたしは玄関に突撃した。
「えっ!? 待って愛理(あいり)、朝ごはんを食べる暇くらい――」
「ないっ!!」
 キッチンから出てきたお父さんにきっぱり言い返して、スニーカーに足を突っ込む。
 急がないと友達が車にはねられちゃうかもしれないの、なんて言えない。
 言ったら、そんな危険な場所に行かせるわけにはいかないって、お父さんはわたしを止めるに決まってる。 
「そ、そうか。なんだか大変そうだけど、くれぐれも気を付けてね?」
「うん、気を付けるね、行ってきます!!」
 スニーカーを履き終えたわたしは玄関の扉を開けて外に飛び出した。
 春の風が吹く廊下に千聖くんの姿はない。
 早く、早く来て。お願い!
 気持ちばかりが焦って、その場で足踏みする。
 十秒と経たずに302号室の扉が開いて、さっきのわたしみたいに千聖くんが飛び出してきた。