私がママに隠そうとした秘密、茶色くて扁平鼻のあの動物さんにバラされちゃいました

「ごちそうさまーっ。やっぱママの作ったロールキャベツは最高だよ」
「ありがとう冬香、嬉しいわ。ところで、この間の実力テストの
結果、まだ返ってきてないの?」
「うん、まだだよ」
 夕食後、ママから不意に出された質問に私は冷静にそう答え、
そそくさ自分のお部屋へ向かいました。
(本当はとっくの昔に全教科返却されてるんだけどね……)
 私は机の引き出しから五枚の答案用紙を取り出し、机の上に並べます。
(社会61、国語52、英語48、理科33、数学29なんて、とてもじゃないけど見せられないよう。中間期末はいつもどの教科も80点くらい取れてるのに、こうゆう一夜漬けが効かない本当の学力が試されるのは全然ダメだな……)
 自己成績のあまりの酷さにため息をつきました。
(去年の、一年生の時受けた実力テストもこんな感じだったな。ママにものすごい叱られて、アニメ雑誌全部捨てられた
悲しい思い出が甦るよ。今回の結果も、いずれはバレちゃうんだろな……そうだ!)
私はふと、いいアイディアを閃きました。
 
    ☆

 翌朝。二月十日、水曜日。
「ママ、今日は燃えるゴミの日でしょ。私が持っていってあげるよ」
「あら、気が利くわね。ありがとう冬香、助かるわ。けっこう重たいから気をつけてね」
「うん。それじゃいってきまーっす!」
 私はゴミ袋を手に持ち、意気揚々と家を出ました。
 通学途中にあるゴミ集積所の前で足を止め、袋の口元をほどきます。そして
通学カバンから例の答案用紙を取り出して、くしゃくしゃに丸めました。
(これでもまだ、何かの拍子で点数丸見えになっちゃうかも。近所の人に見られたら大変だ。あれ使おう)
 さらに厳重に秘密を守るため、袋の中にあったキャベツの葉っぱに包み込んだのです。

       ○
 
 夕方。
「ただいまー」
「おかえり冬香。テスト、今日もまだなの?」
「うん。なんか学習到達度のデータ調査するために外部に提出するとかなんとか言ってたから、当分の間返ってこないって先生が言ってたよ」
「そっか。残念だわ。あ、そうそう。冬香に渡したいものがあるの。
今朝のお礼よ」
 ママはとっても機嫌が良さそうです。デパートの袋からプレゼント箱を取り出して、テーブルの上に置きました。
「わー、ありがとうママ。クッキー? チョコレート?」
「ふふふ、開けてからのお楽しみ♪」
 私はわくわくしながら温かみのあるオレンジ色リボンをほどき、箱を開けました。
「あれ? これは……え!? なっ、なっ、なんで?」
 私は我が目を疑いました。なんと私の、今朝捨てたはずの答案用紙がででーんと現れたのでございます。
「話せば少ーし長くなるんだけど、ママね、三宮の方へお買い物に行く途中、ゴミ捨て場のゴミを漁ってたイノシシさんにばったり出会ったの。ママが近づいたらサササッて逃げちゃったけどね」
「……」
 気が動転している私に向かって、ママはとても嬉しそうに語り始めました。
「それで、そのさい皺くちゃになった紙を落としていったのよ。テストの答案用紙みたいだったから、なるべく見ないように袋の中に戻してあげようと思って拾ったんだけど、芦田冬香って書かれてあったのがついうっかり目に入っちゃって。なーんか見覚えあるお名前だなあって……」
「どっ、同姓同名の子なんじゃないかな」
 私はとっさに口を挟みます。
「ママも最初そう思ったんだけど、学年クラス出席番号、さらに学校名までご丁寧に書かれてあって、松影中学校って」
「わっ、私の学校だ……」
「松影中学校二年七組出席番号一番芦田冬香さんって、あなた以外に誰がいるのかなー? 冬香、これは一体どういうことかしらね? ママにくわしーく説明してほしいな。冬香はとってもいい子だから、きっと正直に話してくれるわよねー」
 ママは私にニカッと微笑みかけました。
「アッ、アハハハハハ」
 私は笑って誤魔化します。このあと私がどうなったかは、読者の皆様でご想像下さいませ。

 蛇足なのですが、最後に一言。燃えるゴミの日は明日でした。