私の体にメスを入れて

「どこのカフェにしようかしら……」

私はスマホを取り出し、おすすめのカフェを調べようとした。その時である。昨夜聞いた声が聞こえた気がして顔を上げた。

「あっ……」

スマホを手から落としそうになる。目の前を、緑川が歩いていた。その隣には小柄で艶やかな黒髪の和風美人。多分、年齢は私とそう変わらないだろう。

女性は楽しそうに緑川に話しかけ、緑川もにこやかにそれに答えているように見える。女性が緑川の腕に自身の腕を絡ませた。緑川は嫌そうな素振りを見せない。

(協力者……ではなさそうね)

緑川だって結婚適齢期だ。そういう相手がいるのは当然だろう。わかっていたはずだ。私とは協力者。都合のいい時だけ、恋人か妻になる。なのにーーー。

(痛い)

メスで切られたみたいに胸が痛い。泣いてしまいそうになって、グッと唇を噛み締める。こんなことで傷付いているなんてみっともないじゃない。

緑川と女性はとあるカフェに入って行った。釣られるように、私もそのカフェへと入った。