私の体にメスを入れて

私たちの関係性は「公安警察」と「協力者」だ。恋人なんて甘ったるくて不安定な関係じゃない。緑川に求められている間だけ恋人・妻のフリをして、その時間が終わればどこかで体を重ねる。ただそれだけ。

(私は、緑川の本当の名前すら知らない。緑川のことを何も知らない)

公安警察は外に潜入する際は身元がバレないように偽名を使う。性格も本来とかけ離れた人物を演じる。私は緑川の素の表情は何度も見たことがある。でも、緑川の好きな食べ物すら知らない。

(何も知らないくせに、緑川のそばにいるだけでこんなに嬉しくなるなんて。……馬鹿みたい)

そう思っていても、心に生まれた気持ちはどうすることもできない。

車が止まった。パーティー会場に着いたようだ。巨大なパーティーホールに着飾った人たちが入っていく。緑川が車を降りた。

「さあ、行こうか」

緑川は先ほどまでなかった笑みを浮かべ、助手席のドアを開けて手を差し出す。エスコートしてくれるようだ。

「ありがとう」