乙女ゲームの世界に転生しちゃったんですけど~ヒロインは恋のライバルです!?~

「……無事に目覚められたようで、何よりです……姫」
 拓馬は硬く拳を握り締め、同じく引き攣った笑顔で言った。
 幸太くんを一瞥し、後で覚えてろよ、と非難の眼差しで告げてから、拓馬は表情を改め、跪いた。
「わたしは隣国の王子です。美しいあなたに一目惚れしました。どうかわたしの妻となっていただきたい」
「ええ、あなたはわたしを眠りから覚ましてくれた恩人ですもの。喜んで!」
 胸中に渦巻く動揺を押し込め、笑顔で差し出された手を取る。
 たちまち、わたしたちを取り囲む小人たちが口々におめでとうと言い、拍手をした。
 客席からも拍手が起こった。
 拓馬と手を繋いだまま、そちらを見る。
 由香ちゃんが笑って拍手している。
 由香ちゃんの隣で、拗ねたようにそっぽ向きながら、乃亜も控えめに拍手していた。
 離れた客席で、有栖先輩も陸先輩も拍手していた。
 有栖先輩は笑顔で、陸先輩はほんの少しだけ口元を緩めて。
 陸先輩の肩の上にはりっちゃんが乗っている。
 りっちゃんも一生懸命手を叩いていた。
「ありがとう! 隣国に行っても、みんなのことは忘れないわ! 本当にありがとう!」
「さようなら、白雪姫! どうかお元気で!」
「お幸せに!」
 小人たちに手を振られ、振り返しながら、わたしと拓馬は舞台袖に退場する。
 そうして二人は幸せに暮らしましたとさ、とナレーション係の子が言った。

《END.》