「あーん……」
王妃兼魔女役の江口さんからリンゴを受け取り、一口齧ったふりをして、わたしはばたんと倒れた。
「きーっひっひ、まんまと騙されたわね、愚かだこと! ざまあみなさい白雪姫! これでわたしがこの国で一番美しい女よ!」
高笑いしながら、江口さんは軽やかにスキップして去っていく。
そしてナレーションが入り、幸太くんを始めとした七人の小人たちが白雪姫を取り囲み、その死を嘆いていたときに偶然隣国の王子様――拓馬が森を通りがかる。
「どうして泣いているんだ小人たち。おや、これはなんと美しい姫だ! わたしはこれほど美しい姫を見たことがない!」
拓馬はどんな顔をして台詞を言っているのだろうか。
目を開けてその姿を見たい。
段ボールで作った棺の中で眠っている白雪姫ではなく、観客の一人として、客席から王子様コスプレをした拓馬を思う存分眺めて目に焼き付けたい! と、恋心が叫んでいる。
目を開けたい欲求と役になり切るべきだという自制心が激しくぶつかり合い、わたしの瞼は痙攣した。
「姫は毒りんごを食べて眠ってしまったのです。どうか王子様のキスで目覚めさせていただけませんか」
「そうか、わかった」
拓馬が膝をつく気配がする。
ついに来た!
わたしの心臓は爆発しそうなほどに激しく収縮を繰り返した。
フリだとはわかっているけれど。わかっているけれど!!
身を固くし、拓馬の顔が近づくのを待っていたときだった。
突然、唇が塞がれた。
唇と唇がしっかり合わさっている。
王妃兼魔女役の江口さんからリンゴを受け取り、一口齧ったふりをして、わたしはばたんと倒れた。
「きーっひっひ、まんまと騙されたわね、愚かだこと! ざまあみなさい白雪姫! これでわたしがこの国で一番美しい女よ!」
高笑いしながら、江口さんは軽やかにスキップして去っていく。
そしてナレーションが入り、幸太くんを始めとした七人の小人たちが白雪姫を取り囲み、その死を嘆いていたときに偶然隣国の王子様――拓馬が森を通りがかる。
「どうして泣いているんだ小人たち。おや、これはなんと美しい姫だ! わたしはこれほど美しい姫を見たことがない!」
拓馬はどんな顔をして台詞を言っているのだろうか。
目を開けてその姿を見たい。
段ボールで作った棺の中で眠っている白雪姫ではなく、観客の一人として、客席から王子様コスプレをした拓馬を思う存分眺めて目に焼き付けたい! と、恋心が叫んでいる。
目を開けたい欲求と役になり切るべきだという自制心が激しくぶつかり合い、わたしの瞼は痙攣した。
「姫は毒りんごを食べて眠ってしまったのです。どうか王子様のキスで目覚めさせていただけませんか」
「そうか、わかった」
拓馬が膝をつく気配がする。
ついに来た!
わたしの心臓は爆発しそうなほどに激しく収縮を繰り返した。
フリだとはわかっているけれど。わかっているけれど!!
身を固くし、拓馬の顔が近づくのを待っていたときだった。
突然、唇が塞がれた。
唇と唇がしっかり合わさっている。

