文化祭当日。
午後二時半を過ぎ、広い講堂では白雪姫の上演が行われていた。
客席には陸先輩や有栖先輩の姿もある。
由香ちゃんも乃亜も椅子に座って舞台を見上げている。
わたしも由香ちゃんの隣に座り、ゆっくり劇を鑑賞しているはず……だったんだけれど。
「そんなこと言わずにさ。一口だけ。どうか、一口だけ」
「わかりました、では、一口だけ……」
なんとわたしはドレスを着て、舞台の中央で白雪姫を演じていた。
こうなったのは舞台に上がる直前、吉住さんが突発的な腹痛を訴えたからである。
動揺を見せたのは王子役の拓馬だけで、他の演劇班の皆はさも白々しく「あらあら大変」と騒ぎ、代役としてわたしを指名した。
白雪姫の台詞は覚えていた。
というのも、事前に吉住さんから「もし万が一わたしに何かあったときのために白雪姫の台詞を暗記しておけ」と言われていたのだ。
全ての衣装が完成した後は毎日遠し稽古を見守って来たし、一度は用事があるからといって先に帰ってしまった吉住さんに代わって白雪姫を演じたこともある。
だからわたしが演じることに問題はない。
しかし、何故吉住さんはわたしに白雪姫役を譲ったのか。
愛する拓馬の相手役をあれほど切望し、ジャンケンに勝ち抜いたときは大喜びしていたのに。
皆の反応を見る限り事前に根回ししていたとしか思えず、わたしは更衣室で吉住さんに「なんでこんなことを?」と尋ねた。
すると吉住さんは「わたしはあんたが嫌いよ」と前置きしてから答えた。
「でも、あんたは夏休み、しつこいナンパ男からわたしを助けた。わたしはあれだけあんたを虐めたのに、それでもわたしを助けてくれた。あんなことわたしにはできない。それに何より、黒瀬くんはあんたといるときが一番いい顔をする。悔しいけど認めるしかない。黒瀬くんに相応しいのはあんただ。あんたが白雪姫を演じることに反対する人は誰もいなかった」と、不貞腐れた顔で言って、脱いだ衣装をわたしに押しつけた。
午後二時半を過ぎ、広い講堂では白雪姫の上演が行われていた。
客席には陸先輩や有栖先輩の姿もある。
由香ちゃんも乃亜も椅子に座って舞台を見上げている。
わたしも由香ちゃんの隣に座り、ゆっくり劇を鑑賞しているはず……だったんだけれど。
「そんなこと言わずにさ。一口だけ。どうか、一口だけ」
「わかりました、では、一口だけ……」
なんとわたしはドレスを着て、舞台の中央で白雪姫を演じていた。
こうなったのは舞台に上がる直前、吉住さんが突発的な腹痛を訴えたからである。
動揺を見せたのは王子役の拓馬だけで、他の演劇班の皆はさも白々しく「あらあら大変」と騒ぎ、代役としてわたしを指名した。
白雪姫の台詞は覚えていた。
というのも、事前に吉住さんから「もし万が一わたしに何かあったときのために白雪姫の台詞を暗記しておけ」と言われていたのだ。
全ての衣装が完成した後は毎日遠し稽古を見守って来たし、一度は用事があるからといって先に帰ってしまった吉住さんに代わって白雪姫を演じたこともある。
だからわたしが演じることに問題はない。
しかし、何故吉住さんはわたしに白雪姫役を譲ったのか。
愛する拓馬の相手役をあれほど切望し、ジャンケンに勝ち抜いたときは大喜びしていたのに。
皆の反応を見る限り事前に根回ししていたとしか思えず、わたしは更衣室で吉住さんに「なんでこんなことを?」と尋ねた。
すると吉住さんは「わたしはあんたが嫌いよ」と前置きしてから答えた。
「でも、あんたは夏休み、しつこいナンパ男からわたしを助けた。わたしはあれだけあんたを虐めたのに、それでもわたしを助けてくれた。あんなことわたしにはできない。それに何より、黒瀬くんはあんたといるときが一番いい顔をする。悔しいけど認めるしかない。黒瀬くんに相応しいのはあんただ。あんたが白雪姫を演じることに反対する人は誰もいなかった」と、不貞腐れた顔で言って、脱いだ衣装をわたしに押しつけた。
