「…………」
また思考にノイズが走った。
野々原のことを考えると、どうも落ち着かない。
彼女が流した涙を思い出すと苛々する。
わけのわからない焦燥感に駆られ、大声で喚き散らし、目につくものを手当たり次第に破壊したくなる――
「たーくまっ」
なんだか妙に浮かれた声で名前を呼ばれ、肩を掴まれた。
はっとして顔を上げれば、ニコニコしながら幸太がおれの傍に立っている。
幸太は左手に一冊の本を抱えていた。
この表紙は、不思議の国のアリス?
「……何だよ」
そもそもいつ戻って来たのか。
思考に没頭しすぎていたらしく、全く気付かなかった。
「いいからちょっとこっち来て。ごめーん、度々王子様を抜けさせて悪いけど、急用でさ! ちょっと借りるなー」
「は? なんで――」
「うん、いいよー」
「いってらー」
幸太はおれの抗議を無視して、おれの手を引き、教室の真横で止まった。
「はい。これ読んで」
教室と廊下を隔てる壁際に寄り、幸太は手に持っていた本を差し出してきた。
よく見れば、不思議の国のアリスのイラストが描かれているものの、タイトルは『DIARY』――日記帳だった。
「なにこれ。お前の?」
眉根を寄せる。
「まさか。日記なんて書くかよ、面倒くせえ。これはののっちの日記帳だよ。お前への愛がたっぷり詰まった、な」
事前に目を通したのか、幸太は笑っているが。
野々原の名前が出た瞬間、おれは日記帳を押し返した。
「要らねえよ。なんであいつの日記帳なんて読まなきゃならねえんだよ。しかもおれへの愛って、気持ち悪――いてっ!?」
言い終わる前に、べしっと頭を叩かれた。
「いいからつべこべ言わずに読め。いますぐ。でなきゃ幼稚園からの縁もこれまでだ」
「………………」
わけがわからない。
だが、幸太の目は本気だった。
仕方なくページを開くと、ボールペンで書かれた野々原の文字が目に飛び込んできた。
また思考にノイズが走った。
野々原のことを考えると、どうも落ち着かない。
彼女が流した涙を思い出すと苛々する。
わけのわからない焦燥感に駆られ、大声で喚き散らし、目につくものを手当たり次第に破壊したくなる――
「たーくまっ」
なんだか妙に浮かれた声で名前を呼ばれ、肩を掴まれた。
はっとして顔を上げれば、ニコニコしながら幸太がおれの傍に立っている。
幸太は左手に一冊の本を抱えていた。
この表紙は、不思議の国のアリス?
「……何だよ」
そもそもいつ戻って来たのか。
思考に没頭しすぎていたらしく、全く気付かなかった。
「いいからちょっとこっち来て。ごめーん、度々王子様を抜けさせて悪いけど、急用でさ! ちょっと借りるなー」
「は? なんで――」
「うん、いいよー」
「いってらー」
幸太はおれの抗議を無視して、おれの手を引き、教室の真横で止まった。
「はい。これ読んで」
教室と廊下を隔てる壁際に寄り、幸太は手に持っていた本を差し出してきた。
よく見れば、不思議の国のアリスのイラストが描かれているものの、タイトルは『DIARY』――日記帳だった。
「なにこれ。お前の?」
眉根を寄せる。
「まさか。日記なんて書くかよ、面倒くせえ。これはののっちの日記帳だよ。お前への愛がたっぷり詰まった、な」
事前に目を通したのか、幸太は笑っているが。
野々原の名前が出た瞬間、おれは日記帳を押し返した。
「要らねえよ。なんであいつの日記帳なんて読まなきゃならねえんだよ。しかもおれへの愛って、気持ち悪――いてっ!?」
言い終わる前に、べしっと頭を叩かれた。
「いいからつべこべ言わずに読め。いますぐ。でなきゃ幼稚園からの縁もこれまでだ」
「………………」
わけがわからない。
だが、幸太の目は本気だった。
仕方なくページを開くと、ボールペンで書かれた野々原の文字が目に飛び込んできた。
