◆ ◆
「何ですって!? どうしてまだ白雪姫が生きているというのよ! 狩人め、確実に息の根を止めろと言ったのに、裏切ったわね!? ええい、忌々しい! こうなったらわたしが直接あの娘を葬ってやるわ!」
元気のない乃亜を連れて視聴覚室から戻った後も、一年一組の教室では引き続き劇の練習が行われていた。
自分から王妃役に立候補しただけあって、江口さんの熱演ぶりは見事だった。
「そうだ、毒りんごを作りましょう! 白雪姫に食べさせてやるの!」
鏡役の女子生徒の前で、いっひっひ、と江口さんが不気味に笑う。
江口さんたちと入れ替わりに、今度は白雪姫役の吉住が輪の中心に立ち、小人たちと楽しく暮らしている様子が演じられていく。
「…………」
王子役として椅子に座り、皆の演技を見守っているものの、王子の出番は最後にしかないため暇だ。
顔の向きは吉住に固定したまま、おれは目だけ動かして乃亜を見た。
二学期の途中から転入してきた彼女は小道具係となり、教室の一角で、小道具係のメンバーに混ざって毒りんごを作っていた。
青ざめた、浮かない顔で丸い球体を赤く塗っている。
さっきから様子がおかしい。
有栖先輩は違うと否定したが、やっぱり野々原がまた乃亜に何かしたのではないだろうか。
この一週間、乃亜は陰で野々原に虐められていたという。
野々原はおれのことが好きで、恋人になった乃亜のことが許せず、酷い嫌がらせをした。
乃亜はすれ違う度に嫌味を言われ、小突かれ、別れろと迫られたそうだ。
許せない。そんな奴だとは思わなかった。
おれに手料理を振る舞い、共に過ごした日々を思い返すと、果たして本当に野々原はそんな奴だったかと、時折泡に似た疑惑が浮かぶこともあるが、《《乃亜がそう言うのだからそうに決まっている》》。
乃亜は何よりも大事なおれの恋人だ。疑うなどとんでもない。
乃亜の言うことだけを素直に信じればいい。
だから、野々原は敵だ。
乃亜を虐める最低最悪な、憎むべき敵。それでいい――それでいいって、どういうことだ?
これではまるで、納得いかないのに必死で言い聞かせているかのようじゃないか?
「何ですって!? どうしてまだ白雪姫が生きているというのよ! 狩人め、確実に息の根を止めろと言ったのに、裏切ったわね!? ええい、忌々しい! こうなったらわたしが直接あの娘を葬ってやるわ!」
元気のない乃亜を連れて視聴覚室から戻った後も、一年一組の教室では引き続き劇の練習が行われていた。
自分から王妃役に立候補しただけあって、江口さんの熱演ぶりは見事だった。
「そうだ、毒りんごを作りましょう! 白雪姫に食べさせてやるの!」
鏡役の女子生徒の前で、いっひっひ、と江口さんが不気味に笑う。
江口さんたちと入れ替わりに、今度は白雪姫役の吉住が輪の中心に立ち、小人たちと楽しく暮らしている様子が演じられていく。
「…………」
王子役として椅子に座り、皆の演技を見守っているものの、王子の出番は最後にしかないため暇だ。
顔の向きは吉住に固定したまま、おれは目だけ動かして乃亜を見た。
二学期の途中から転入してきた彼女は小道具係となり、教室の一角で、小道具係のメンバーに混ざって毒りんごを作っていた。
青ざめた、浮かない顔で丸い球体を赤く塗っている。
さっきから様子がおかしい。
有栖先輩は違うと否定したが、やっぱり野々原がまた乃亜に何かしたのではないだろうか。
この一週間、乃亜は陰で野々原に虐められていたという。
野々原はおれのことが好きで、恋人になった乃亜のことが許せず、酷い嫌がらせをした。
乃亜はすれ違う度に嫌味を言われ、小突かれ、別れろと迫られたそうだ。
許せない。そんな奴だとは思わなかった。
おれに手料理を振る舞い、共に過ごした日々を思い返すと、果たして本当に野々原はそんな奴だったかと、時折泡に似た疑惑が浮かぶこともあるが、《《乃亜がそう言うのだからそうに決まっている》》。
乃亜は何よりも大事なおれの恋人だ。疑うなどとんでもない。
乃亜の言うことだけを素直に信じればいい。
だから、野々原は敵だ。
乃亜を虐める最低最悪な、憎むべき敵。それでいい――それでいいって、どういうことだ?
これではまるで、納得いかないのに必死で言い聞かせているかのようじゃないか?
