「ううん、いいよ。神さまに操られてたんだからしょうがないよ。ののっちって呼んでくれて、またこうやって話しかけてくれて、凄く嬉しい。洗脳が解けたみたいで本当に良かった」
「うん、ありがと。笑って許してくれるなんて、ののっちマジ女神だわ」
幸太くんはわたしの手を取り、ぶんぶん振った。
子犬のような笑顔につられて、わたしの頬も緩む。
良かった、明るく無邪気な幸太くんに戻ってくれた。
「俺も謝らないといけない」
幸太くんが手を離したところで、陸先輩が歩み寄って来た。
陸先輩は四人の中で最も長身なので、傍に立たれると威圧感がある。
「三日前の朝、昇降口で挨拶されたのに、無視して悪かった」
陸先輩は律儀に会釈した。
「いいえ、謝らないでください。陸先輩も乃亜に洗脳された被害者なんですから、悪いのは乃亜です」
一色さん、と呼ぶのはもう止めた。
加害者に敬称をつける義理はない。
昼休憩以降、由香ちゃんも彼女を呼び捨てにしている。
「乃亜か……」
陸先輩は苦々しい顔つきになった。
「おとついの茶会で、俺はパウンドケーキを作った。乃亜を喜ばせたい、その一心で作った力作だった。だが、有栖から全てを聞いたいま、もう二度とパウンドケーキは作らないと心に決めた」
「なんてことを言い出すんですか!」
わたしは慌てて陸先輩の腕を掴んだ。
「陸先輩のパウンドケーキは頬っぺたが落ちるほど美味しいのに! 『ブルーベル』のパウンドケーキより、ううん、どんなお店のケーキより美味しいのに! わたし、お茶会のお土産に貰った陸先輩のパウンドケーキを食べたとき、一口で泣いたんですよ!? 世の中にはこんなに美味しいパウンドケーキがあるんだなあって感動したんです!」
「……そんなに気に入ったのか?」
陸先輩はじっとわたしを見つめた。
「はい!」
陸先輩の腕をがっしと掴んだまま、大きく首を縦に二度振る。
「乃亜のせいでもう二度と作らないなんてもったいなさすぎます、どうか考え直してください!」
「……そうか」
陸先輩は無表情で頷いて。
「お前がそう言うなら、また作ろう」
わたしを見つめて、小さく口の端を上げた。
「うん、ありがと。笑って許してくれるなんて、ののっちマジ女神だわ」
幸太くんはわたしの手を取り、ぶんぶん振った。
子犬のような笑顔につられて、わたしの頬も緩む。
良かった、明るく無邪気な幸太くんに戻ってくれた。
「俺も謝らないといけない」
幸太くんが手を離したところで、陸先輩が歩み寄って来た。
陸先輩は四人の中で最も長身なので、傍に立たれると威圧感がある。
「三日前の朝、昇降口で挨拶されたのに、無視して悪かった」
陸先輩は律儀に会釈した。
「いいえ、謝らないでください。陸先輩も乃亜に洗脳された被害者なんですから、悪いのは乃亜です」
一色さん、と呼ぶのはもう止めた。
加害者に敬称をつける義理はない。
昼休憩以降、由香ちゃんも彼女を呼び捨てにしている。
「乃亜か……」
陸先輩は苦々しい顔つきになった。
「おとついの茶会で、俺はパウンドケーキを作った。乃亜を喜ばせたい、その一心で作った力作だった。だが、有栖から全てを聞いたいま、もう二度とパウンドケーキは作らないと心に決めた」
「なんてことを言い出すんですか!」
わたしは慌てて陸先輩の腕を掴んだ。
「陸先輩のパウンドケーキは頬っぺたが落ちるほど美味しいのに! 『ブルーベル』のパウンドケーキより、ううん、どんなお店のケーキより美味しいのに! わたし、お茶会のお土産に貰った陸先輩のパウンドケーキを食べたとき、一口で泣いたんですよ!? 世の中にはこんなに美味しいパウンドケーキがあるんだなあって感動したんです!」
「……そんなに気に入ったのか?」
陸先輩はじっとわたしを見つめた。
「はい!」
陸先輩の腕をがっしと掴んだまま、大きく首を縦に二度振る。
「乃亜のせいでもう二度と作らないなんてもったいなさすぎます、どうか考え直してください!」
「……そうか」
陸先輩は無表情で頷いて。
「お前がそう言うなら、また作ろう」
わたしを見つめて、小さく口の端を上げた。

