「一色乃亜は悠理ちゃんと同じく他の世界からやって来た転生者だった。自分がヒロインだという自覚があり、黒瀬くんたちはいつか自分のものになる運命の相手だと信じて疑わなかった。その考えを助長させたのが乃亜の傍にいる神さま。神さまはいつだって乃亜を全肯定し、俗に言う『ヒロイン補正』を極限まで発揮し、周囲の人間を全て乃亜の思い通りに操った。いまもそう。わたしたちのクラスメイトだけじゃない、全校生徒がみんな操られてるの。そうじゃなきゃ説明がつかないでしょう? いくら乃亜が美少女でも、四股なんてふざけてる。白石先輩や赤嶺先輩のファンが黙ってるはずないと思わない?」
「…………思う……でも、それより」
わたしはこめかみを手のひらで押さえた。
全校生徒が神さまに操られているとか、そんなことより、何よりも強くわたしの心を揺らすのは、由香ちゃんの言葉。
拓馬はわたしのことが好きだった――その言葉が頭から離れない。
「……黒瀬くんは悠理ちゃんのことがずっと好きだったって、大福くんが言ってるよ。神さまが黒瀬くんの恋心を封印していなかったらもっと早く両思いになれただろうって。またごめんって謝ってる」
「……それは大福のせいじゃないよ。大福のことは恨んでない」
本心だ。大福のことを恨んだことは一度もない。
口では何だかんだ言いつつも、大福はいつもわたしのことを気にかけ、味方でいてくれた。
でも、大福に指示を出していた黒幕は。
拓馬の心を操って、「気持ち悪い」と言わせた神さまのことは――許せるわけがない。
「……何なの。何なのそれ……拓馬の心を操って、わたしの告白を台無しにして……それが神さまのすることなの? わたしがモブだからって、いくらなんでもあんまりだ……ヒロインは、神さまは、何をしたっていいの?」
涙の堤防が決壊し、わたしは顔を片手で覆った。
――おし。まだ誰もゴールしてねえな、行くぞ! 夢のゴールテープを切らせてやるよ!
――お前に頼りにされるのは、まあ……悪い気はしねえし。
拓馬がこれまで見せた表情が、言った言葉が、わたしの肩を震わせる。
――またすぐ消えた。流れ星が流れてる間に願い事を三回唱えるとか無理だろ。誰だよこのジンクス考えたやつ。せめて二回にしろよ。
夏の夜、二人で星を眺めていたとき、拓馬は空に向かって愚痴った。
流れ星にどんな願い事をしたのか聞いたら、拓馬は「内緒」と笑ったけれど。
もしかしたら、わたしの隣で寝転びながら、拓馬はわたしと同じことを考えていたのかもしれない。
想いが叶いますように。
ずっと傍にいられますように――と。
「…………思う……でも、それより」
わたしはこめかみを手のひらで押さえた。
全校生徒が神さまに操られているとか、そんなことより、何よりも強くわたしの心を揺らすのは、由香ちゃんの言葉。
拓馬はわたしのことが好きだった――その言葉が頭から離れない。
「……黒瀬くんは悠理ちゃんのことがずっと好きだったって、大福くんが言ってるよ。神さまが黒瀬くんの恋心を封印していなかったらもっと早く両思いになれただろうって。またごめんって謝ってる」
「……それは大福のせいじゃないよ。大福のことは恨んでない」
本心だ。大福のことを恨んだことは一度もない。
口では何だかんだ言いつつも、大福はいつもわたしのことを気にかけ、味方でいてくれた。
でも、大福に指示を出していた黒幕は。
拓馬の心を操って、「気持ち悪い」と言わせた神さまのことは――許せるわけがない。
「……何なの。何なのそれ……拓馬の心を操って、わたしの告白を台無しにして……それが神さまのすることなの? わたしがモブだからって、いくらなんでもあんまりだ……ヒロインは、神さまは、何をしたっていいの?」
涙の堤防が決壊し、わたしは顔を片手で覆った。
――おし。まだ誰もゴールしてねえな、行くぞ! 夢のゴールテープを切らせてやるよ!
――お前に頼りにされるのは、まあ……悪い気はしねえし。
拓馬がこれまで見せた表情が、言った言葉が、わたしの肩を震わせる。
――またすぐ消えた。流れ星が流れてる間に願い事を三回唱えるとか無理だろ。誰だよこのジンクス考えたやつ。せめて二回にしろよ。
夏の夜、二人で星を眺めていたとき、拓馬は空に向かって愚痴った。
流れ星にどんな願い事をしたのか聞いたら、拓馬は「内緒」と笑ったけれど。
もしかしたら、わたしの隣で寝転びながら、拓馬はわたしと同じことを考えていたのかもしれない。
想いが叶いますように。
ずっと傍にいられますように――と。
