由香ちゃんは自分の右手を見下ろして、そこにいるであろう白いハムスターを見つめながら喋り続けた。
「『そんなわけないよな。オイラがガムテープでぐるぐる巻きにされた後も、ずっと泣いてたんだろうな。ごめんな。オイラ間違ってた。最初からお前の味方をしてやれば良かったって、凄く後悔してるんだ。いまさら許してくれなんて言えないけど、でも、今度こそお前の恋がちゃんと成就するように手伝わせて欲しいんだ。由香も協力するって言ってくれたぞ』――わたしだけじゃないよ、悠理ちゃん。白石先輩も無事に目が覚めてね、協力してくれるって約束してくれたんだよ! 緑地くんと赤嶺先輩の洗脳を解くって断言してくれた! 良かったね悠理ちゃん! 一色さんや神さまに立ち向かう味方が増えたよ!」
由香ちゃんは空いている左手でわたしの手を掴み、笑顔で上下に振った。
頬を上気させている彼女の興奮が伝わるような振り方だった。
わたしはいまだ脳の処理が追い付かず、呆然としていた。
「あ」
固まっているわたしを見て何か勘違いしたらしく、由香ちゃんは急に手を振るのを止め、申し訳なさそうに目を伏せた。
「そうだよね、誰より黒瀬くんのことが一番心配だよね。でも、黒瀬くんは悠理ちゃんへの想いが強すぎて、忘れさせるために何度も洗脳を繰り返されたんだって。簡単には解けそうにないから、白石先輩が無理やり解くんじゃなくて、神さまに手順を踏んでちゃんと――」
「ちょっと待って」
聞き捨てならない台詞を聞いて、ようやく硬直していた脳が回転を始め、わたしは由香ちゃんと繋いでいる手を強く握り締めた。
「『拓馬はわたしへの想いが強すぎて』って、どういうこと? 拓馬はわたしのことを気持ち悪いとまで――」
「違うんだよ悠理ちゃん! 大福くんも首を振ってる!」
由香ちゃんは痛いくらいに強くわたしの手を握り返し、真剣な表情で言った。
「ごめん、わたし、現場を見ていた大福くんから全部聞いたの。良く聞いて。悠理ちゃんの告白が断られたのは、一色乃亜の仕業なの。あのとき黒瀬くんは去ろうとした悠理ちゃんの手を掴んで、何か言いかけたでしょう?」
即座に脳が当時の記憶を再生する。
「おれは」――拓馬はわたしの手を掴んで、何か言いたそうな顔をした。
「悠理ちゃんが告白する前日、乃亜と再会を果たしたその日から黒瀬くんは神さまによって洗脳されてた。感情を弄られて、乃亜が好きだと思い込まされてた。でも、それでも悠理ちゃんに告白されたあの瞬間、きっと黒瀬くんは自分の本当の気持ちを思い出したんだよ」
由香ちゃんは泣きそうな顔で言った。
「黒瀬くんは悠理ちゃんのことが好きで、そう伝えようとしたんだよ。でもその瞬間、神さまが邪魔をした。黒瀬くんの悠理ちゃんに対する好感度ゲージを一気にマイナスまで落としたんだって」
「え……」
わたしを見つめて、もどかしげに震えた拓馬の唇。
あれは――あの動作が意味することは。
「『そんなわけないよな。オイラがガムテープでぐるぐる巻きにされた後も、ずっと泣いてたんだろうな。ごめんな。オイラ間違ってた。最初からお前の味方をしてやれば良かったって、凄く後悔してるんだ。いまさら許してくれなんて言えないけど、でも、今度こそお前の恋がちゃんと成就するように手伝わせて欲しいんだ。由香も協力するって言ってくれたぞ』――わたしだけじゃないよ、悠理ちゃん。白石先輩も無事に目が覚めてね、協力してくれるって約束してくれたんだよ! 緑地くんと赤嶺先輩の洗脳を解くって断言してくれた! 良かったね悠理ちゃん! 一色さんや神さまに立ち向かう味方が増えたよ!」
由香ちゃんは空いている左手でわたしの手を掴み、笑顔で上下に振った。
頬を上気させている彼女の興奮が伝わるような振り方だった。
わたしはいまだ脳の処理が追い付かず、呆然としていた。
「あ」
固まっているわたしを見て何か勘違いしたらしく、由香ちゃんは急に手を振るのを止め、申し訳なさそうに目を伏せた。
「そうだよね、誰より黒瀬くんのことが一番心配だよね。でも、黒瀬くんは悠理ちゃんへの想いが強すぎて、忘れさせるために何度も洗脳を繰り返されたんだって。簡単には解けそうにないから、白石先輩が無理やり解くんじゃなくて、神さまに手順を踏んでちゃんと――」
「ちょっと待って」
聞き捨てならない台詞を聞いて、ようやく硬直していた脳が回転を始め、わたしは由香ちゃんと繋いでいる手を強く握り締めた。
「『拓馬はわたしへの想いが強すぎて』って、どういうこと? 拓馬はわたしのことを気持ち悪いとまで――」
「違うんだよ悠理ちゃん! 大福くんも首を振ってる!」
由香ちゃんは痛いくらいに強くわたしの手を握り返し、真剣な表情で言った。
「ごめん、わたし、現場を見ていた大福くんから全部聞いたの。良く聞いて。悠理ちゃんの告白が断られたのは、一色乃亜の仕業なの。あのとき黒瀬くんは去ろうとした悠理ちゃんの手を掴んで、何か言いかけたでしょう?」
即座に脳が当時の記憶を再生する。
「おれは」――拓馬はわたしの手を掴んで、何か言いたそうな顔をした。
「悠理ちゃんが告白する前日、乃亜と再会を果たしたその日から黒瀬くんは神さまによって洗脳されてた。感情を弄られて、乃亜が好きだと思い込まされてた。でも、それでも悠理ちゃんに告白されたあの瞬間、きっと黒瀬くんは自分の本当の気持ちを思い出したんだよ」
由香ちゃんは泣きそうな顔で言った。
「黒瀬くんは悠理ちゃんのことが好きで、そう伝えようとしたんだよ。でもその瞬間、神さまが邪魔をした。黒瀬くんの悠理ちゃんに対する好感度ゲージを一気にマイナスまで落としたんだって」
「え……」
わたしを見つめて、もどかしげに震えた拓馬の唇。
あれは――あの動作が意味することは。
