◆ ◆
騒がしい教室の一角で、ひときわ明るい笑い声が弾けた。
わたしの席の斜め後ろ、窓際から聞こえたそれは、拓馬の声だった。
幸太くんの声もする。
今日も乃亜は二人を傍に侍らせて笑っていた。
聴覚が「お茶会」の単語を拾い上げる。
おとついの日曜日は有栖先輩のマンションでお茶会があったらしい。
わたしは手元のスマホに視線を固定し、そちらを見ないようにしていた。
でも、声は勝手にわたしの耳に飛び込んで来る。
「有栖先輩がまた来週も集まろうって言ってたよ。陸先輩が乃亜のためにモンブラン作るって」
「そうなの? 嬉しい。わたしモンブラン大好きなんだ」
「なら今度『ブルーベル』で買ってこようか? おれも乃亜と一緒に食べたいし」
「あっずるいぞ拓馬、乃亜と二人で食べる気だな!? 言っただろ、抜け駆け禁止だって! 乃亜はみんなのものなんだからな!」
「やだ、恥ずかしいからそんなに大きな声出さないで。幸太とはスイーツ食べ放題に行きたいと思ってるんだよ?」
「えっマジで? 行く行く! いつにする!?」
イヤホンを忘れたことを後悔した。
音楽でも聴いていれば、聞かなくてもいい声を聞かずに済んだのに。
由香ちゃんはいつ帰って来るんだろう。
拓馬たちの声を意図的に耳から締め出して、わたしは昼休憩時間が残り半分を切ったのに戻ってこない親友のことを考えた。
今日は用事があるから先に食べててと、彼女は昼食も食べずにどこかへ行ってしまった。
由香ちゃんは朝から様子がおかしい。
校門の近くで出会い、いつものように「おはよう」と笑顔で挨拶した途端、彼女は怒りと悲しみが混ざったような、複雑な目でわたしを見つめた。
かと思えば、彼女は急に俯き、葛藤を断ち切るように激しく首を振って、ようやく「おはよう」と返してきた。
何かあったのかと聞いたけれど教えてくれなかった。
彼女は明らかに隠し事をしている。
わたし、何かしたかな。
いくら考えてもわからない。
騒がしい教室の一角で、ひときわ明るい笑い声が弾けた。
わたしの席の斜め後ろ、窓際から聞こえたそれは、拓馬の声だった。
幸太くんの声もする。
今日も乃亜は二人を傍に侍らせて笑っていた。
聴覚が「お茶会」の単語を拾い上げる。
おとついの日曜日は有栖先輩のマンションでお茶会があったらしい。
わたしは手元のスマホに視線を固定し、そちらを見ないようにしていた。
でも、声は勝手にわたしの耳に飛び込んで来る。
「有栖先輩がまた来週も集まろうって言ってたよ。陸先輩が乃亜のためにモンブラン作るって」
「そうなの? 嬉しい。わたしモンブラン大好きなんだ」
「なら今度『ブルーベル』で買ってこようか? おれも乃亜と一緒に食べたいし」
「あっずるいぞ拓馬、乃亜と二人で食べる気だな!? 言っただろ、抜け駆け禁止だって! 乃亜はみんなのものなんだからな!」
「やだ、恥ずかしいからそんなに大きな声出さないで。幸太とはスイーツ食べ放題に行きたいと思ってるんだよ?」
「えっマジで? 行く行く! いつにする!?」
イヤホンを忘れたことを後悔した。
音楽でも聴いていれば、聞かなくてもいい声を聞かずに済んだのに。
由香ちゃんはいつ帰って来るんだろう。
拓馬たちの声を意図的に耳から締め出して、わたしは昼休憩時間が残り半分を切ったのに戻ってこない親友のことを考えた。
今日は用事があるから先に食べててと、彼女は昼食も食べずにどこかへ行ってしまった。
由香ちゃんは朝から様子がおかしい。
校門の近くで出会い、いつものように「おはよう」と笑顔で挨拶した途端、彼女は怒りと悲しみが混ざったような、複雑な目でわたしを見つめた。
かと思えば、彼女は急に俯き、葛藤を断ち切るように激しく首を振って、ようやく「おはよう」と返してきた。
何かあったのかと聞いたけれど教えてくれなかった。
彼女は明らかに隠し事をしている。
わたし、何かしたかな。
いくら考えてもわからない。
