乙女ゲームの世界に転生しちゃったんですけど~ヒロインは恋のライバルです!?~

「よりにもよって最悪なタイミングでほとんど上限近かった悠理への好感度をマイナスまで落としやがったな!? 引き留めたとき、拓馬は『おれもお前のことが好きだ』って言いたかったはずなのに! なんで笑ってんだよ!? なあ、見てただろ!? 拓馬泣いてたじゃないか!! 拓馬のことが好きならなんで泣かせて笑ってんだよ!? 何がヒロインだよ、おかしいよお前!!」
 憤懣やるかたなく、後ろ足二本で立って両前足を激しく振る。 
「拓馬の感情や記憶を弄って、自分が好きだと錯覚させて、無理やり恋人ごっこを演じさせて! 本当にお前はそれで満足なのかよ!? そんなことしたって虚しいだけだろ!?」
「ううん、ちっとも虚しくなんてないよ?」
 乃亜はその美しい顔に天使のような微笑みを浮かべ、顎に指を当て、小首を傾げた。
「あたしは何も悪いことなんてしてない。悪いのは全部あいつでしょ? あいつがモブという立場もわきまえず、あたしがいない間に拓馬を誑かしたから拓馬がおかしくなっちゃったんだもの。ヒロインに惚れない拓馬なんて拓馬じゃない。あたしは本来の彼に戻しただけ。一体何が間違ってるの?」
「そうですよ下ぼく。乃亜は何も間違ってなどいません。ヒロインとして正しく拓馬を導いただけです」
 乃亜の肩の上で、神さまが同意する。
 神さまは全面的に乃亜の味方だ。
 だからこそ厄介だった。
「大体さー、攻略対象キャラがヒロインを放ってモブに現を抜かすなんてありえないでしょ? そんな乙女ゲーム、ただのクソゲーじゃん。あたしだったらブチ切れて画面割るわ」
「乃亜、その言葉遣いはどうでしょう」
「あ、ごめーん。乃亜は淑やかで上品でいなきゃね。ヒロインらしくね。大変失礼致しましたわ。いまの発言は忘れてくださいませ」
 乃亜はスカートを摘まんで一礼し、一人で楽しそうに笑った。
「さーて、邪魔なモブも消えたし、逆ハーレム目指そうかな」
 大きく伸びをしながら、乃亜はとんでもないことを言い出した。