「……ごめんね、急に。変なこと言い出して。拓馬には素敵な彼女がいるのにね」
わたしは右手で前髪を弄りながら顔を伏せた。
泣いてしまいそうで、これ以上拓馬の顔を直視していることができなかった。
震える左手を強く握る。
借り物競争のとき、夏祭りのとき、いつだって拓馬が繋いでくれたのはこの手だった。
あの幸せな温もりは、きっとこの先どれだけ時が流れても忘れない。
「……いまわたしが言ったことは、全部忘れて。伝えなきゃ後悔すると思って言わせてもらっただけだから。本当に、拓馬と一色さんの仲を邪魔するつもりなんてないの。もう拓馬には近づかないようにするし、連絡先も消すね。もう……必要ないだろうし」
有栖のお茶会のライングループも抜けさせてもらおう。
断ち切るんだ。拓馬に関する全てを。
どんなに苦しくても辛くても、そのほうがお互いのためになる。
わたしは涙の衝動を振り切って顔を上げ、笑顔を作った。
「聞いてくれてありがとう。それじゃ」
頭を下げ、涙が零れる前に立ち去ろうとした、そのときだった。
ほとんど反射的、といった動作で、左手首を掴まれた。
驚いて振り返れば、拓馬がわたしの手を掴んでいる。
「…………?」
何故引き留めるんだろう。わたしは大いに困惑していた。
もう近づかない、それで終わりのはずなのに。
「おれは」
拓馬は何かを言いかけて、言葉を切った。
もどかしげにその唇が上下する。
「…………何?」
わたしが尋ねると。
拓馬は突然、大きく瞬きした。
表情の動きが奇妙だった。
拓馬の眼差しに宿っていた熱が消えて、すうっと――大切な何かが抜けていったような気がした。
わたしは右手で前髪を弄りながら顔を伏せた。
泣いてしまいそうで、これ以上拓馬の顔を直視していることができなかった。
震える左手を強く握る。
借り物競争のとき、夏祭りのとき、いつだって拓馬が繋いでくれたのはこの手だった。
あの幸せな温もりは、きっとこの先どれだけ時が流れても忘れない。
「……いまわたしが言ったことは、全部忘れて。伝えなきゃ後悔すると思って言わせてもらっただけだから。本当に、拓馬と一色さんの仲を邪魔するつもりなんてないの。もう拓馬には近づかないようにするし、連絡先も消すね。もう……必要ないだろうし」
有栖のお茶会のライングループも抜けさせてもらおう。
断ち切るんだ。拓馬に関する全てを。
どんなに苦しくても辛くても、そのほうがお互いのためになる。
わたしは涙の衝動を振り切って顔を上げ、笑顔を作った。
「聞いてくれてありがとう。それじゃ」
頭を下げ、涙が零れる前に立ち去ろうとした、そのときだった。
ほとんど反射的、といった動作で、左手首を掴まれた。
驚いて振り返れば、拓馬がわたしの手を掴んでいる。
「…………?」
何故引き留めるんだろう。わたしは大いに困惑していた。
もう近づかない、それで終わりのはずなのに。
「おれは」
拓馬は何かを言いかけて、言葉を切った。
もどかしげにその唇が上下する。
「…………何?」
わたしが尋ねると。
拓馬は突然、大きく瞬きした。
表情の動きが奇妙だった。
拓馬の眼差しに宿っていた熱が消えて、すうっと――大切な何かが抜けていったような気がした。

