「一色さんっていう素敵な彼女がいるのはわかってる。でも、わたし、これまでずっと拓馬のこと好きだったの。きっぱりフラれないといつまでも引きずって、とても先に進めそうにないんだ。だからお願い。告白させて」
数秒の間があった。
彼女としては受け入れがたい要求だろう。
でも、わたしは黙って頭を下げ続けた。
「……野々原さんって、正直な人なんだね。そんなこと、わざわざわたしに断らなくたっていいのに」
「いや。でも」
ぽん、と肩を叩かれて、わたしを恐る恐る顔を上げた。
「いいよ。野々原さんの好きにして。でも、拓馬はわたしの彼氏だからね? たとえ拓馬がOKしたって、絶対譲らないから」
乃亜はファイルを片手に抱いて、悪戯っぽく笑った。
「あはは。うん。それはないから大丈夫だよ。ありがとう!」
これで心置きなくフラれることができる。
「じゃあまた教室でね!」
わたしは笑顔で言い、踵を返して階段を下りて行った。
それきり振り向かなかったから、知らなかった。
「……モブの分際で」
乃亜が小さな声で吐き捨て、胸に抱いたファイルを歪ませるほど手に力を込めたことに。
数秒の間があった。
彼女としては受け入れがたい要求だろう。
でも、わたしは黙って頭を下げ続けた。
「……野々原さんって、正直な人なんだね。そんなこと、わざわざわたしに断らなくたっていいのに」
「いや。でも」
ぽん、と肩を叩かれて、わたしを恐る恐る顔を上げた。
「いいよ。野々原さんの好きにして。でも、拓馬はわたしの彼氏だからね? たとえ拓馬がOKしたって、絶対譲らないから」
乃亜はファイルを片手に抱いて、悪戯っぽく笑った。
「あはは。うん。それはないから大丈夫だよ。ありがとう!」
これで心置きなくフラれることができる。
「じゃあまた教室でね!」
わたしは笑顔で言い、踵を返して階段を下りて行った。
それきり振り向かなかったから、知らなかった。
「……モブの分際で」
乃亜が小さな声で吐き捨て、胸に抱いたファイルを歪ませるほど手に力を込めたことに。
