乙女ゲームの世界に転生しちゃったんですけど~ヒロインは恋のライバルです!?~

 目が溶けるんじゃないかと思うほど泣いたらお腹が減った。
 泣くという行為は意外と体力を使う。
 どんなに悲しくとも、苦しくとも、誰だって永遠に泣いてはいられない。
「……はー」
 ポテトチップスを食べ終えて、わたしは空になった袋をゴミ箱に入れた。
 相変わらず、脳内ではぐるぐると思考が渦を巻いている。
 これまで見た拓馬の表情が次々と思い浮かんでは消えていき、わたしは目を閉じて、再びため息をついた。
 不毛だ。拓馬は乃亜の彼氏になったのに。
 わたしがいくら拓馬のことを考えようと意味なんてないのに。
 そうだ、もっとポジティブに考えよう。
 乃亜が拓馬の料理係になるというならそれでいいじゃないか。
 もう毎日の献立にいちいち悩むこともない。
 栄養バランス、お弁当の色合い、予算、そういったことに気を遣わなくても済む。
 楽になったじゃん。
 面倒な料理係から解放されて良かったじゃん、やったね――嘘だ。
 確かに面倒だと思う日もあったけど、拓馬が美味しいと喜んでくれる顔を見れば、それまでの苦労も面倒も全部帳消しになり、頑張った自分を誇らしく思えたのに。
「……あーもう、だから。未練がましいな、わたし」
 眉間を指で揉み、呻く。
 諦めきれないのは、ちゃんと拓馬にフラれてないからだろう。
 大福からは「告白が受け入れられたら恋心を封印する」と脅されていたけれど、もう大福はいないし、乃亜という彼女がいる以上、告白が受け入れられることはまずない。
 ある意味安心してフラれることができるというわけだ。
「……良し。決めた。明日拓馬に告白して、きっぱりフラれる! そしたら気持ちにも区切りがつくはず!」
 決意して、わたしは跳ね起きた。
 それから、机に座ってルーズリーフを広げた。
 もうわたしの出る幕はないかもしれないけれど。
 それでも、拓馬のためにできることはまだある。