「あれっ」
朝のホームルーム。
黒板の前で簡単な自己紹介を終えた乃亜は、急に驚きの声を上げた。
彼女がその大きな瞳に映しているのは拓馬だ。
夏休み明けの席替えにより、教室の窓際の一番後ろの席となった拓馬もまた、戸惑ったような顔で彼女を見返している。
「どうしたんだ、一色」
教壇の前にいる担任教師が乃亜に尋ねた。
わたしのクラス担任は眼鏡をかけた中年の男性教師で、名前は山根。数学担当。
「すみません。夏祭りのときに偶然出会った人がいたので、つい驚いて……」
「黒瀬と知り合いだったのか」
山根先生は見つめ合っている拓馬と乃亜の顔を交互に見た。
「それなら黒瀬、放課後に学校案内してやれ」
笑顔で何言い出すんですか山根先生!
余計なイベントを起こさないで、とわたしは内心で悲鳴を上げた。
「え、おれですか」
「ああ。学級委員に頼もうと思ってたんだが、知り合いのほうが一色も緊張せずに済むだろ。ちょうどお前ら、席も隣同士になるしな。学校案内も交流の一環だ」
「……わかりました」
空いている隣の席を一瞥し、拓馬が頷く。
「じゃあ一色、あそこに座って」
「はい」
乃亜が通路を歩き、拓馬の隣の席に座って鞄を置く。
よろしくね、とでも言ったのだろうか。
乃亜が微笑み、拓馬も微笑み返している。
転校初日の数分でこれである。
放課後の学校案内が終わる頃になったら、拓馬の好感度ゲージはどこまで上がっているんだろう。
「…………」
わたしは危機感と焦燥感に駆られ、机の下で拳を握った。
朝のホームルーム。
黒板の前で簡単な自己紹介を終えた乃亜は、急に驚きの声を上げた。
彼女がその大きな瞳に映しているのは拓馬だ。
夏休み明けの席替えにより、教室の窓際の一番後ろの席となった拓馬もまた、戸惑ったような顔で彼女を見返している。
「どうしたんだ、一色」
教壇の前にいる担任教師が乃亜に尋ねた。
わたしのクラス担任は眼鏡をかけた中年の男性教師で、名前は山根。数学担当。
「すみません。夏祭りのときに偶然出会った人がいたので、つい驚いて……」
「黒瀬と知り合いだったのか」
山根先生は見つめ合っている拓馬と乃亜の顔を交互に見た。
「それなら黒瀬、放課後に学校案内してやれ」
笑顔で何言い出すんですか山根先生!
余計なイベントを起こさないで、とわたしは内心で悲鳴を上げた。
「え、おれですか」
「ああ。学級委員に頼もうと思ってたんだが、知り合いのほうが一色も緊張せずに済むだろ。ちょうどお前ら、席も隣同士になるしな。学校案内も交流の一環だ」
「……わかりました」
空いている隣の席を一瞥し、拓馬が頷く。
「じゃあ一色、あそこに座って」
「はい」
乃亜が通路を歩き、拓馬の隣の席に座って鞄を置く。
よろしくね、とでも言ったのだろうか。
乃亜が微笑み、拓馬も微笑み返している。
転校初日の数分でこれである。
放課後の学校案内が終わる頃になったら、拓馬の好感度ゲージはどこまで上がっているんだろう。
「…………」
わたしは危機感と焦燥感に駆られ、机の下で拳を握った。

