「イケメンはイケメンらしく振る舞わないとな。てわけで、行くぞ」
拓馬がわたしの左手を掴み、歩き出した。
当たり前のように手を繋がれたから、驚いた。
体育祭の借り物競争のことを思い出す。
あのときも彼は「行くぞ」と言ってわたしの左手を掴んだ。
「なんだ、彼女持ちか」
どこからか、残念そうな声が聞こえた。
違う。わたしは拓馬の彼女じゃない。ただのクラスメイト。
でも、世界一幸せなクラスメイトだ。
「花火までまだ時間あるし、何か食う?」
「うーん。じゃあ、焼きそばが食べたい!」
「ああ、屋台の焼きそばって美味いよな」
わたしの手を引きながら、拓馬が笑う。
夢のようだ。
拓馬と手を繋いでお祭りを見て回れるなんて。
ドキドキしながら、繋いだ手に力を込めると、拓馬も同じ強さで握り返してくれた。
「――――!」
心臓がぎゅっと縮む。
「じゃあ焼きそばの屋台探すか。その後もなんか食う?」
「りんご飴。わたしの家ではお祭りといえばりんご飴なの。これを食べないことには終われないの」
「ふーん。おれの家にはそういうのないな。その時々に応じて気が向いたのを食べるって感じ。あ、あった」
拓馬が焼きそばの屋台を指さし、こちらを振り返ったとき。
子どもが凄い勢いで前方を横切った。
「あっ」
不運なことに、子どもの進路上には紙コップを持った少女がいた。
子どもに体当たりされた少女はよろけて拓馬にぶつかり、中身のジュースが拓馬のズボンに飛び散った。
驚いた拓馬がわたしと繋いでいた手を離し、前方に向き直る。
「すみませんっ。ああ、大変! ズボンが!」
髪をポニーテイルにした少女が慌てて身を引いた。
「――え」
彼女の顔を認識した瞬間、世界が止まった。
祭囃子の音楽も、人々の喧騒も、何もかもが消え去る。
――どういうこと? 嘘でしょう? 何かの間違いでしょう?
誰かにそう訊きたいけれど、声が出ない。
腰まで届く髪、ぱっちりとした大きな二重。
シフォン素材の白いブラウスと水色のスカートを着ている。
斜め掛けにした鞄には可愛らしいリスのマスコットキーチェーンが下げられていた。
藤美野学園に通うとき、いつも鞄に下げていたお気に入り。
そう――わたしは彼女を知っている。
拓馬がわたしの左手を掴み、歩き出した。
当たり前のように手を繋がれたから、驚いた。
体育祭の借り物競争のことを思い出す。
あのときも彼は「行くぞ」と言ってわたしの左手を掴んだ。
「なんだ、彼女持ちか」
どこからか、残念そうな声が聞こえた。
違う。わたしは拓馬の彼女じゃない。ただのクラスメイト。
でも、世界一幸せなクラスメイトだ。
「花火までまだ時間あるし、何か食う?」
「うーん。じゃあ、焼きそばが食べたい!」
「ああ、屋台の焼きそばって美味いよな」
わたしの手を引きながら、拓馬が笑う。
夢のようだ。
拓馬と手を繋いでお祭りを見て回れるなんて。
ドキドキしながら、繋いだ手に力を込めると、拓馬も同じ強さで握り返してくれた。
「――――!」
心臓がぎゅっと縮む。
「じゃあ焼きそばの屋台探すか。その後もなんか食う?」
「りんご飴。わたしの家ではお祭りといえばりんご飴なの。これを食べないことには終われないの」
「ふーん。おれの家にはそういうのないな。その時々に応じて気が向いたのを食べるって感じ。あ、あった」
拓馬が焼きそばの屋台を指さし、こちらを振り返ったとき。
子どもが凄い勢いで前方を横切った。
「あっ」
不運なことに、子どもの進路上には紙コップを持った少女がいた。
子どもに体当たりされた少女はよろけて拓馬にぶつかり、中身のジュースが拓馬のズボンに飛び散った。
驚いた拓馬がわたしと繋いでいた手を離し、前方に向き直る。
「すみませんっ。ああ、大変! ズボンが!」
髪をポニーテイルにした少女が慌てて身を引いた。
「――え」
彼女の顔を認識した瞬間、世界が止まった。
祭囃子の音楽も、人々の喧騒も、何もかもが消え去る。
――どういうこと? 嘘でしょう? 何かの間違いでしょう?
誰かにそう訊きたいけれど、声が出ない。
腰まで届く髪、ぱっちりとした大きな二重。
シフォン素材の白いブラウスと水色のスカートを着ている。
斜め掛けにした鞄には可愛らしいリスのマスコットキーチェーンが下げられていた。
藤美野学園に通うとき、いつも鞄に下げていたお気に入り。
そう――わたしは彼女を知っている。

